劇場公開日 2009年9月4日

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「回る司令室」サブウェイ123 激突 因果さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0回る司令室

2025年6月10日
iPhoneアプリから投稿

とにかくグルグル回る映画だった。デンゼル・ワシントンが犯人のジョン・トラボルタからの無線に応じる司令室のシーンは常に回転している。しかも常にショットはカメラの動きの途中で切り刻まれ、文字通り息つく間もない疾走感と緊張感が生まれる。

上手く撮れた画だろうと普通の画だろうと物語の進行リズムのためにポンポン浪費していく思い切りの良さが清々しい。

小物の運用の上手さはさすがのハリウッド映画。スナイパーの足元で蠢くネズミやトラボルタがカチャカチャと手元で弄る鉄製器具が、中盤から終盤にかけてキーアイテムとして唐突に輝き出す。

地下鉄の闇とデンゼルの黒い肌色の相性の悪さもバッチリで、身代金を載せたトロッコを押しながらトラボルタら立てこもり犯がいる車両の前に現れるシーンでは間違って射殺されたりしないかな…とヒヤヒヤした。それを踏まえてかデンゼルが反射素材付きのベストを羽織っているのが面白い。

しかしそのおかげで、渋滞のマンハッタン橋の上をベストを脱ぎ捨てながら駆けていくシーンにはかなりカタルシスがある。

トラボルタの目的は安っぽい身代金などではなく、立てこもりを起こすことで市場を操作し、プットオプションを成功させることにあった。だからデンゼルに銃を突きつけられた際もやけに落ち着き払って「俺を殺せ」と嘯いてみせる。

いやいや命あっての物種でしょうよとツッコミたくなるところだが、彼はそういう世俗的な価値観とは既に訣別している。それゆえ彼には敬虔なキリスト者という属性が付与されている。

デンゼルの賄賂問題やらトラボルタのビジネスの予後やら後日談の燃料はいくらでもあるというのに、バカみたいなデブのNY市長がデンゼルの活躍を適当に褒め称えてスパッと終幕してしまう歯切れのよさ。まるで全盛期のハリウッド映画だ。

因果
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