「僕らがすぐにイメージできるアフガニスタンじゃないほう」君のためなら千回でも えすけんさんの映画レビュー(感想・評価)
僕らがすぐにイメージできるアフガニスタンじゃないほう
1970年代後半の田園風景が美しいアフガニスタン。固い友情で結ばれていた資本家の息子とその使用人の息子。とある事件をきっかけに、ふたりの友情に亀裂が入るが、そんな折、旧ソ連のアフガン侵攻が勃発する。
幼少期の残酷なまでの行き違いは、後に大きな後悔となって襲い掛かる。本作は主人公アミールが、国家的宿命に左右されながらも、強い意志で乗り越える贖罪の物語。
更に言えば、その贖罪を困難なものにしているアフガンの現状に、実直で無垢な眼差しを向け、祖国へ何をしているのかと問う怒りの物語でもある。
実際、作中前半部分に描かれている70年代のアフガニスタンと後半に描かれている2000年代のアフガニスタンは、同じ国とは思えないほど歴然とした違いを見せる。そして僕らがすぐにイメージできるアフガニスタンは後半のほうだ。
少年期の取り戻せない罪の償いの辛さに加え、母国が崩壊してしまった遣る瀬無さのオーバラップが切ない。そして、それでも前に歩みを進める様に、友情、贖罪、母国愛の強さを見た。
コメントする