劇場公開日 2011年5月21日

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「設定は面白いのに活かし切れず」アウェイク いおりさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5設定は面白いのに活かし切れず

2011年5月25日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

怖い

術中覚醒: アネセシア・アウェアネス
全身麻酔が効かず、意識も感覚も失われない状態を指す事象
2100万人の全身麻酔に対し、3万人発生という

初めて耳にする興味深い事実
素材としては、かなり面白い
しかも、臓器移植中に覚醒するという展開

うっかり、ナイフで手を切るだけでも大騒ぎなのに
痛覚そのままで、心臓をえぐられる痛みたるや
どれほどのものなのか、想像を超えている

それこそリアリティのある「ソウ」ではないかと
もう、この設定だけで観る気満々になったのだが

若き富豪のクレイは心臓疾患を抱えていた
母にナイショで秘書のサムとこっそり付き合う彼
ようやくドナーが見つかり、いざ手術に臨む
しかし全身麻酔中にも関わらず、意識は残り激痛に襲われる
そこで明らかになった事実に追い込まれるクレイ
果たしてクレイはいろいろな意味で“目覚め”られるか

多くのサスペンスは、謎が解かれた時点で味気なくなるもの
だからこそ、キーマンが誰かを示唆してはいけない
出来れば「アンノウン」同様に予備情報はなしで
それこそ、チラシすら見ないことを勧めたい

クレイ役、ヘイデン・クリステンセンは相変わらず
品の良さが見える、スタイルのカッコ良さは健在だ
サム役のジェシカ・アルバは可愛らしいたぬき顔
近作 「キラー・インサイド・ミー」 よりは愛嬌感じる役で
オープニングシーンの二人は、絵的にかなり見映えがする

ただし、全体的に演技や演出が無難で普通で深みがない
病弱なはずのクレイは健康体にしか見えないし
多くの人物の内面が薄味で、苦悩から滲み出るはずの哀愁が足らない

例えば、表情が乏しいヘイデン
アナキン・スカイウォーカー以上の彼になかなかお会い出来ず、残念
また、テレンス・ハワードは極めて無難で希薄
名優 レナ“蜘蛛女”オリンの演技がやはり最も印象に残る

ストーリーはサスペンスらしいオーソドックスで
ミスリードさせたり、伏線ひいたりとそれなりに楽しめた
だが、やはり物足りなかったのが本音

何というか、全体的につくりが真面目すぎて意外性に乏しい
話が無難で、驚きや衝撃が期待値より低い結果となった

例えば、悪役の背景の薄っぺらさ
しかも犯行理由はあまりにありきたり
止むに止まれぬ事情から犯罪に、など奥行き出してもいいのでは?
火サスの方が、はるかに犯人の背景を魅力的に描くのが上手い

また、アネセシア・・・の描写が生かし切れていないこと
麻酔効かずに心臓をえぐられる描写が、あの程度はないだろう
思考は停止し、あらんかぎりの絶叫を伴うのは間違いない
ただの幽体離脱のきっかけにしては仰々しくも、描写はあっさり
せっかくの設定がもったいなさすぎる

それでも、真相が明らかになってからの展開はなかなか
喜びと哀しみが入り混じる終盤の展開は
爽快であるもほろ苦く
個人的には好みのエンディングだった

最後に信じられる愛による解決は悪くない
アネセシアなんたらは、という素材もいい
それだけに、もっと大胆でメリハリある味付けが欲しかった

しかし、困ったことが一つ
もし手術を受ける時があったら、この作品が頭をよぎるだろうことだ
麻酔が効くかどうか・・・考えただけでも恐ろしい

いおり