おろちのレビュー・感想・評価
全2件を表示
醜悪 VS 美貌の楳図ワールド
楳図かずお原作の映画化といえば、『漂流教室』(1987)が有名ですが、正直なところ、楳図ワールド(原作のパニック恐怖感)があまり表現されておらず、原作への思い入れも深かったため、非常にがっかりしました。(映画を観たのはずいぶん昔なのに、残念感はずっと胸に残っている)
そんなこともあって、この『おろち』も、ガックリ来るのではないだろうかと心配していましたが、そこそこ楳図な世界がきちんと表現されていて、ちょっとホッとしました。観てよかった。もっと早く観たらよかった。
昭和の富裕層の館の開かずの間のような
誰も入ることが許されない奥の部屋。
得たいの知れない何か(誰か)が棲んでいる
座敷牢のような禁断の場所、
誰にも語ることの出来ない門前家の「秘密」。
木村佳乃といえば、『僕のヤバイ妻』(全9回の2016年の連ドラ)をわりと最近に見ました。文字通り、本当に「ヤバイ」のですが、この『おろち』でも、美が崩れていく女の狂気に支配された心がヤバイぐらい恐ろしく、目ヂカラもすごかったです。木村佳乃の株が自分の中でまたまた上がりました。
楳図かずおは、女性の美に対する執着からくる嫉妬や憎悪などを著した作品が多く、これもその一つ。漫画本の「おろち」を読んだのは、ずっと昔。詳しいストーリーとか忘れていますが、漫画はもっともっと「おどろおどろしい」感じで、動き(ヘビ女が這っているような)があったように思います。
AmazonのKindle本でサンプルを見て、
思い出してきましたぁー!
もう1度、紙の漫画をじっくり読みたくなってきました。
姉妹の演技がすごかったせいか、おろちの谷村美月がやや食われがちで、おろちの「立ち位置」が多少、弱かったかも。おろちは人間世界を傍観する謎の少女なので、あまり人間的であってもよくないので、映像化になると難しいかもしれません。でも、谷村美月は、独特の暗さを表現できる女優さんで、少女のあどけなさも残しており、よかったです。
家政婦として人間世界を観察するという点では、筒井康隆の「家族八景」の七瀬も思い出しました。
あ、それと、山本太郎って、男優だったんだ。笑
.
自宅にて鑑賞。楳図かずおの同名マンガ内『姉妹』と『血』のエピソードが原作。ご贔屓の高橋洋が脚本。日頃、余りマンガは読まないが、本作は昔に読んだ記憶有り。独特の世界観が出ており、西洋館を舞台にした際に有りがちな陳腐さも無い。ただ谷村美月演じる“おろち”は存在が中途半端な狂言回しの印象、原作の様な語部に徹した方が良かったのでは……。木村佳乃の熱演が圧倒的、特にツンデレ母“門前葵”より“一草”の狂乱振りが光る。“理沙”の中越典子の嗤うシーンもソレ迄の印象とガラリッと変り、そのギャップが良かった。60/100点。
・各キャラクター毎にイメージカラーが設定されており、衣裳だけで誰なのか識別出来た。谷村美月 演じる“佳子”の落下シーン、本作と同じ高橋洋脚本の『女優霊('95)』でもよく似たポーズで落ちている。
・鑑賞日:2011年11月7日(月)
全2件を表示