「とてもスタイリッシュに、論理的に構成されている」大いなる陰謀 mac-inさんの映画レビュー(感想・評価)
とてもスタイリッシュに、論理的に構成されている
なかなかの力作。共和党に対するネガティヴキャンペーンのような映画。だが、いろんな思いが込められている。大統領選挙前年によく作られたと思う。ブッシュもパウエルも、ライスも写真で出てくる。米国らしい。日本では考えられない。
映画は、レッドフォード扮する政治学の大学教授が、まれに見る秀才だが、政治的無関心の一人の学生を、いかに政治的に感心を持たせ、現実に目を向けさせることができるか、説得する話。結局それも徒労に終わる。しかし、その若者には何か落ち着かないものを残す‥。
という話をメインに、政治家(トム・クルーズ)のリークという(今までもイラクや、アフガンでも何度もあったであろう)、マスメディア(TV記者役がメリル・ストリーブ)が踊らさせる様を入れ込み、またその影で犠牲になってしまった若者を描く。というもの。
映画自体は、
1.トム・クルーズ扮する若手共和党上院議員がTV記者のメリル・ストリーブを呼びつけ、アフガンでの作戦をリークするシーン
2.ロバートレッドフォードが扮する政治学の大学教授が、大変優秀だが怠惰で政治に無関心な白人学生を、政治的に啓蒙しようとするシーン
3.ロバート・レッドフォードの教え子で、レッドフォードの講義に触発され「行動すること」を決断し、今、正にアフガンの戦場で戦っている二人
の主要な3つのシーンのカットバックでほぼ、成り立っている。
とてもスタイリッシュに、論理的に構成されている。図式的、意識的、寓話的な作り。内容としては、戦争と政治とマスメディアの関係、裕福な白人系若者の政治的無関心と貧困層である黒人やヒスパニック系の人種が戦場へ駆り出されている事実という、現在の米国のマイナスの現状を伝える。
そして、レッドフォード(教授の台詞だが、本音だと思う)は「無関心の若者」に立て!と苛立ちを表す。
レッドフォード(教授)は、戦場に行く二人の教え子には、「無意味な戦争に参加するな」と説得し、「正義の戦争なら、自分も参加する」と言う。その辺が米国国民らしいところ。日本人なら、民間援助や、外交ルートなど非戦闘的な面を考えがちだが。
映画としては、1時間30分にまとめ、キレがよく、テンポもいい。が、全体的にモヤモヤ感を残す。内容のせいか、表現的にもっと突っ込んで描けばよかったのかは分からない。モヤモヤ感こそ、現状の認識なのかもしれない。