「人間の行動を動物の視点で振り返る」バンビ movie mammaさんの映画レビュー(感想・評価)
人間の行動を動物の視点で振り返る
狩人から見ればシカは害獣指定種なのだが、人間界に降りてきてすらいない可愛く美しいシカ達が厳しい冬と人間に脅かされる様子を見て、人間のあり方を省みる。
春に産まれ、夏に成長と出会いを経験し、秋は実りを食し、冬の寒さと飢えに耐えたところで、やっと見つけた新芽。食べてすぐに、母親を狩人に撃たれて亡くすバンビ。自立心旺盛でやんちゃというよりは、怖がりで恥ずかしがり屋で甘えん坊なタイプの男の子のバンビと常に一緒にいて見守り、身の守り方も教えてくれていた母親が急にいなくなり、肝心な時には必ず助けてくれるが、近寄り難くもあるほど威厳ある父親と過ごすことに。
まだ1歳のバンビはどれだけ心細く、悲しかっただろう。しかも、自然界なら仕方なくもある弱肉強食が理由ではなく、人間のせい。子を持つ親としては、考えてしまう。
擬人的にシカや鳥や小動物達の感情や生活を見てからの、銃声のシーンはより一層堪えるし、1942年製作なので、反戦意識も盛り込まれているような気がする。
それでも春になればまた繁殖の季節。バンビは幼なじみのファリーンをめぐり、他の雄と闘う。運動神経抜群とは言えず、よちよちしていたバンビが、心も身体も強くなり雄を蹴散らすシーンに成長を感じる。
ところが、次の冬には再び人間が銃だけでなく猟犬まで連れてきて、更には火に巻かれ。バンビがはぐれたファリーンを見つけて、猟犬達を振り飛ばしながらファリーンを逃がし、燃え盛る火の中を駆けつけた父と逃げきる。燃え残ったわずかな場所に動物達がひしめき合う避難所状態と化したところが印象的。ファリーンと再会できて、心底ほっとする。
守れた命と亡くした命の重みを、生き残った動物達で分かち合い、安堵とともに噛み締め耐え忍び、乗り越えるのだろう。災害や地上戦を経験した国ならきっとわかる感覚だと思う。
次の春にはファリーンとの間に双子が。守り守られて生き残った命が繋いだ大切な命。もしかして人間が襲来した時、ファリーンは双子を身籠ってすらいたのでは?
バンビと同じ深い茶色の毛色に、ファリーンと同じ青い目の子と、ファリーンの薄茶に、バンビと同じ茶色い目の子。
鹿の成長スピードは早いから、たった2年、3回目の春には、幼くて可愛かったバンビの子供達まで見せて貰える。友達のとんすけの子供達やフラワーの子供達も無事。本当に、命があって良かったと思わされる瞬間。
小さい頃は、沢山出てくる可愛い動物達の仕草が大好きで見ていたけれど、大人になると見方が変わるし、カメラが引いていくような描写まであるアニメーション技術にも目を見張る。