コントロール(2004)のレビュー・感想・評価
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心に残る作品
描写が美しい。被害者の流した血の雫が、主人公の肩に落ちてくるシーンが忘れられない。
極悪非道を突っ走る主人公が、ふと無防備になった瞬間。なんだか自分もこんな経験をしたような気がする、そのくらい自然に落ちてくる表現。拭っても拭いきれない、罪悪感という染み。
アナグレスを飲み、別のIDを与えられ、生まれ変わった主人公。でも、罪を犯した記憶が消えたわけじゃない。
罪悪感から被害者に会いに行ったことにより、存在がばれ、過去が追いかけてくる。
人を本当にコントロールしているものは何か。彼が非行に走ったのも、母親を救えなかった罪悪感、無力感によるものではなかっただろうか。そして、それと向き合う勇気を与えたのは他でもなく、博士を初めとする周囲からの信頼と愛情だった。
もう一つこの映画でインパクトがあるのは、全てが偶然だということ。彼が凶悪な父親の元に生まれたことも、養護施設で誰にも守られなかったことも。それを運命としてタトゥーのように刻み込み、非情に生きることが自由意志のようにみえたとしても。偶然通りかかった無辜の人を傷つけたことや、その血が自分に落ちてきたことも、成り行き。
彼は理不尽な目にあって、理不尽を再生産してしまった。それに気がつくのが血のシーン。
人は自分でコントロールできない事象にコントロールされている。もし、何か一つでも違っていたら。彼が自分で自分が彼だったかも。
忘れたい記憶のある人に見て欲しい映画です。
気づいたら死んでいた??
いきなりリー・レイ・オリバー(リオッタ)の薬物注射による死刑シーン。何人も殺した回想シーンが不気味でもある。
気づくと生きていた。ある薬物の被験者となることが条件だったのだ。説明するのはウィレム・デフォー、見守るスティーヴン・レイという濃い顔の俳優たち。そして手錠を外した途端に野獣のように逃亡を試みるのであった・・・そして、坑打つ剤の効果を試す第二段階として、金を与えて普通の人間の暮らしをさせる(もちろん監視付きで)。
逃亡することしか考えてなかったせいで、薬で落ち着いてからも何かと疑われてしまうリー・レイ。スーパーの女性(ロドリゲス)とも仲良くなるが、あくまでも殺人犯の過去を消し、普通の人間として。殺人犯としての過去がバレなければ十分立ち直ることもできたのだが、ロシアン・マフィアの男も凶暴だ。精神薄弱の弟の頭を撃ったことで、その世話ばかりの男は復讐としてリー・レイを狙う。彼は立ち直ったと判断したデフォーだったが、実はあれはプラシーボだったと告白するレイ。本物の薬の被験者はみな肝臓をやられて死んでしまっていたのだ・・・
非人道的な製薬会社の人体実験も問題なのに、マフィアアクションで問題をすりかえられた気もするし、最期があれでは可哀想だ。真人間になれたのかどうか、もっと様子を見なければわからないだろうけど、人間性善説を考えると、なかなか考えさせられる映画だ。
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