劇場公開日 2005年2月5日

「これが「恨の文化」というものなのか」復讐者に憐れみを talkieさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0これが「恨の文化」というものなのか

2024年4月13日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

〈映画のことば〉
復讐が復讐を呼び、更なる孤独を呼び込む。
私はこの映画で学んだ。
深すぎる愛は、返り血を浴びるのだ。

古田博司さんという方は歴史学者て、とくに韓民族の(政治)思想史に詳しい方のようですけれども。
同氏によれば、韓国は「恨」の文化の国柄で、朝鮮文化における恨は「伝統規範からみて責任を他者に押し付けられない状況のもとで、階層型秩序で下位に置かれた不満の累積とその解消願望」と定義づけられているようです。

冒頭の「映画のことば」は、厳密には映画のことば(作品の脚本の中に現れるセリフ)ではなく、本作に寄せた阪本順治監督の作品紹介の言い回しになります。
しかし、本作のテーマを言い得て妙なので、映画のことばとして拾うこととしたものでした。

そのようなイメージどおりに、緑を基調とした全体の色使いの画面が独特だったと思いました。まず。評論子は。
画面から受ける印象は、まるで、現実から遊離したかのような不気味なな雰囲気すら醸し出していたように思います。

結局は「恨の文化」それ自体や「恨の文化(復讐という怨念)の無意味さ」を描いたと評論子は、受け止めました。本作を。
「人を呪わば穴二つ」とは、本作のような場合を指して言う言い回しではないかとも思いました。

本作の特典映像の解説によれば、本作は、別作品『オールド・ボーイ』の原点とされていることなどです。(ちなみに、同作は、ハリウッド・リメイクもされていると承知しています。)
また、本作は別作品『別れる決心』、同『JSA』など、いわば極限状態に置かれた人々の心情の機微を描くことに長(た)けた、パク・チャヌク監督の手になる一本ということで、さらに上掲『オールド・ボーイ』や別作品『親切なクムジャさん』などと並んで、いわゆる「復讐三部作本として、高い世評を受けていると承知しています。

かてて加えて、本作は、約40億円の負債を抱えて倒産(民事再生法)するまで、『月はどっちに出ている』『フラガール』などの秀作を世に送り出し続けたシネカノンの配給作品であることにも、食指を動かされていた一本でしたけれども。

その期待にも違(たが)うことなく、深い姉弟愛を背景として、それ故の復讐者の思念を描き切った一本として、佳作の評価に値する一本だったと思います。
評価子は。

(追記)
本来、映画を観ることは楽しいことのはずなのですけれども。
何と言っても映画を観ることが好きで映画ファンをやっているわけですから。
本作のような作品を観ると、正直、心がズンと沈みます。
しかし、それだけ、本作が良い作品だったということでしょう。
それでも、映画ファンであって、映画ファンを続けていて良かったと思えるのは。
これからも、映画ファンでありたいとも思えた一本でした。
評論子には。

talkie