運命を分けたザイル

劇場公開日:

解説

世界中で大ベストセラーを記録したノンフィクション文学『死のクレバス アンデス氷壁の遭難』を、英国ドキュメンタリー映画界でもっとも注目される監督ケヴィン・マクドナルドによって映像化。英国では、公開されるや「ボウリング・フォー・コロンバイン」を抜いてドキュメンタリー部門歴代興行収入1位の記録を塗り替えた。本物に迫る映像を追求するために、大部分の撮影を実際の事故現場であるアンデス山脈で行い、当時の状況を完全なまでに復元した。アンデスの過酷な雪山で、ザイルに繋がれたまま遭難した2人の登山家の生還劇を当事者たちのインタビューを交えて描く。

2003年製作/107分/イギリス
原題または英題:Touching the Void
配給:アスミック・エース
劇場公開日:2005年2月11日

あらすじ

1985年、野心あふれる英国の若きクライマーのジョー・シンプソン(ブレンダン・マッキー)とサイモン・イェーツ(ニコラス・アーロン)は、その困難さゆえに世界のトップクライマーさえ近づこうとしないペルーのアンデス山脈、標高6600mの難関シウラ・グランデ峰に挑む。前人未到の西側は、ほぼ垂直に立ち上がり、目指す頂上ははるか上空の雲に隠れて姿を見せない。想像を超えるスケール。しかし、ここで引き下がるわけにはいかない。彼らの挑戦が幕を開ける。氷壁に激しくアックスを打ち込み、アイゼンの蹴爪を壁に噛ませる。氷の火花を散らしながら、ひとつひとつの動作を確かめつつ、リズムを掴んでゆく。少しずつ刻むように、天空を目指し登っていくふたり。身体が熱を帯び始め、体内に血液が駆けめぐる。高度が上がるにつれ、呼吸も荒くなる。大きな岸壁や裂け目、氷柱が次々と行く手を阻み、落石が間一髪のところで頭をかすめてゆく。それでも冷静な判断力を失わずに、突き進む。ベースキャンプを持たずに登頂するアルパイン・スタイルは、食料も道具も最小限であるため、限られた時間で登頂を成功させなければならない。たとえ吹雪や闇夜になっても、ヘッドライトのわずかな光で登りつづけなければならない。頼れるのはパートナーだけだ。3日目、幾多の困難を乗り越えて、ついに頂上を極める瞬間が訪れた。誰も足を踏み入れたことのない聖域。眼下に世界を見下ろしながら、肩を抱き合い互いをたたえ合う。これまでの苦難が一気に脳裏から離れて、全身に達成感が満ち溢れていく。しかし、下山は思うようにはならなかった。突如足場が崩れて、ジョーは急斜面に激しく叩きつけられ、数十メートルほど落下してしまう。太もものあたりから湧き上がる鋭い痛み。何度も立ち上がろうとするが、痛みと寒さで身体がいうことをきかない。骨が折れたのか? 絶望に駆られ、恐怖が身体を支配してゆく。山の恐怖を知り尽くしているジョーは、それが「死」を意味することを本能的に直感する。そんな苦渋に満ちたジョーの表情を見たサイモンも、瞬時にそれを察する。救助などとうてい望めない絶望的な状況。体感温度マイナス60度。食料も底を尽き、猛吹雪に見舞われ視界もゼロに等しい。それでも、どうにかジョーを生還させたいと、サイモンは互いの体をザイルで結び、わずかな可能性を信じて、前例のない単独救出を試みる。しかし次の瞬間、ジョーの体は激しくバランスを崩し、垂直に切り立った氷壁で宙吊りになってしまう。生き残るにはザイルを登るしかないが、自由を失った身体では、どうすることもできない。ジョーを支えるサイモンも、限界をすでに超えていた。「今、このザイルを切らなければ、二人とも死んでしまう…」凍えきった手でナイフを取り出すと、サイモンは迷いを断つようにザイルを切る。宙に投げ出されたジョーは分厚い氷を突き破り、はるか下方で口を開けているクレバスの中へ落ちていった。クレバスの蒼暗い闇の底。奇跡的にジョーは一命を取り留めたが、内部は大聖堂のように天井が高く、出口はまったく見当たらない。冷たく無機質で、恐ろしい空間。何度も助けを求めて叫ぶが、その声は氷の中に閉ざされてしまう。「ここで死んでしまうのか」。迫りくる絶望と孤独。だが、自分を憐れみながら死を待つよりも、行動して死にたい。極限の状況の中で、ジョーの新たな挑戦が始まった。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

4.0人と人のつながりを感じてください。

2025年2月23日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

悲しい

知的

物語の結果はわかっています。
ここで描かれているのはそれに至る過程です。

普段、人が体験しえないよな壮絶な世界が描かれています。
恐ろしい世界といっても過言ではありません。
パートナーを信頼し支えあうことが唯一の頼みなのかもしれません。

こういう世界に世の中の縮図を垣間見えると感じます。

「あきらめない」「自分を勇気付ける」「パートナーを思いやる」
人を助けられるのは人である。
そんな大事なことを教えられる作品であろうと思います。

この原作を元にハラハラドキドキを促進させるような大作風に仕上げることも可能だっただろうと思いますが多くの演出などもなくほんとうにドキュメンタリータッチの姿勢を作品に組み込んでいたのが更に観やすいかも

しれません。映像がリアルで「どんな風に撮ったんだ?」とわからないぐらいのシーンがあり驚きます。

私自身も中学生の頃、父親と父親の知人と私3名で雪山に登りました。
そして吹雪、豪雪に見舞われて地理感覚が狂い目的の宿泊所に行けず遭難しかけました。
もちろんここまで壮絶ではありませんでした。
でもその当時は焦りましたね。

父親はそれ以降にも一度、雪山に一人で行き遭難しかけましたが携帯電話の電波がギリギリ入ったため助かった。
ということがありました。
それでも未だに山には行き続けてますね。

たぶん、父親の登山技術が低いのではなく「自然の力」ってのに人間が太刀打ちできない瞬間もあるということでしょう。

人によっては「山に登る意味がわからない」と感じる人もいるだろうが、それを知るためにこの映画を観るのではなく世の中の縮図とも言える「人と人のつながり」を感じるために是非観てみてください。

貴重な時間を過ごせるでしょう。
オススメです。

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ノリ

5.0『Brown Girl in the Ring』 ボニーM♥️

2024年12月12日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD
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アンドロイド爺さん♥️

3.0なにがなんでも生きて帰るという執念

2024年10月1日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

山岳遭難という絶望的な状況で、なにがなんでも生きて帰るという執念を見せられた作品。
セミドキュメンタリー風に描いてあり、どこまでが演出なのかわかりませんが、主人公の足の痛みや、絶望的な寒さ。過酷な自然の厳しさなど、とてもリアルに感じられました。

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うそつきかもめ

3.5すごい話ですね

2016年9月20日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

本人達のインタビュー映像と再現映像が交互に流れるという構成なのですが、本人達が個別にインタビューを受けるのみで交わることがなかったのが何だか却って印象的でした。

しかし、不屈の精神で生還を果たしたジョーはすごいですね。人生訓みたいな話がいくつか出てくるんですが、説得力がすごいですよ。その辺のおっさんと言ってること一緒なんですけど、さすがに違って聞こえます。

ジョーが書いた原作も読んでみようと思います。

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donothing

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