「図太い親爺」父、帰る Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
図太い親爺
総合:65点
ストーリー: 55
キャスト: 70
演出: 75
ビジュアル: 75
音楽: 70
この長い不在の年月を感じない堂々とした態度と自信はどこから湧いてくるのだろうか。12年間の説明は何もなし、挨拶すらなし、照れもなしでいきなり自分のやり方と価値観を子供に押し付ける。
そして帰ってきたと思ったらすぐに息子たちと旅に出発。しかもただの旅ではなさそうだ。怪しい電話、怪しい目的地、そして掘り出された怪しい箱。特別な事情があるのは明らか。何事にも動じず物事を強引に進めていく姿勢は、もしかすると犯罪者だろうか。12年間音信普通だったのは、もしかすると刑務所に入っていたのだろうか。少年の強盗にも全く慌てることはないのは、この手のことは日常茶飯事であるからであろう。そもそも何故今帰ってきて、息子たちと一緒に旅にでなければならないのか。目的があるならば一人で行ったほうが面倒くさくないだろうに。しかし母親がいきなりの父の帰宅とその直後の旅を承諾していることから、少なくとも母親は事情を知っていると思われる。
ところがそんなことはどうでもいい。この映画はそのようなことを取り入れながらも、実は親子関係のみを主題にしている。父親にどんな事情があろうが、打ち解ける前に何があろうが、結局父親が愛情を持っていたことが美しく寂しい写真と音楽で文学的に淡々と暗示される。彼らが理解しあう前に別離を迎えざるえなかった悲劇とその余韻が残る。
しかし、面白かったかといわれるとどうだろうか。演出の仕方とか映画の質とかは悪くないのだが、結局父は帰った来て旅に出てそして去った。視聴者には数々の謎を残したままで。映画の進行に必要性のない話が入りそれがそのまま放置されたまま主題の話だけが進んでいく。謎が謎のまま残されてもまとまりがあればいいのだが、この映画の場合は関係のない話が中途半端なまま残された感じがした。
それと人間の体って生死を問わず普通は沈まない。浮くよな。