「女性による女性のポルノ」イン・ザ・カット とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
女性による女性のポルノ
”女性のための”とつけるかは、鑑賞者の嗜好によるかな。
監督・制作・主役とすべて女性の手による映画。
ライアンさんが、すでに主演に決まっていたキッドマンさんを差し置いて、監督に自分を売り込み、結果、この役を気に行っていたキッドマンさんを制作に回した映画と聞いて、どれだけの演技をなさるんだろうと興味シンシンで鑑賞。
キッドマンさんが主役の方がよかったな。
原作未読。原作は、その言葉使いの独特さと、猟奇的嗜好で、知る人ぞ知る、コアなファンがついている小説と聞く。
根暗で引っ込み思案で、男性経験に疎いけど、興味津津の中年女という点では、ライアンさんも頑張っていたと思う(ラブコメ女王というのは作品見たことがないからわからない)。
でも、”言葉オタク”で、変質的な言葉に陶酔を感じる収集家という、神経質な面がまったく表現されていない。そういうことを表現したいのだろうシーンは幾つかある。でもライアンさんの演技からは伝わってこない。キッドマンさんならと思ってしまう。なんで役者変えたんだ。
だから、ふとしたことで事件に巻き込まれてしまった女性としか映らない。それが事件に巻き込まれると同時に、恋にも目覚め、その二つが交差してって言う展開。
ラストの結末は、さすが女性監督による映画と喝采を挙げたい締め方だけど、じゃあ、スカッとするかと言われれば、その前までの映像がグロすぎて、ニ度見る気にはならない。
グロい、かなりの衝撃的な場面がモロ突然表れる。
否、あの場面のあの展開なら予想はしていた。でも、あれほどはっきり見せるとは思わなかった。猟奇的嗜好のイラストなんかだと、とても耽美的な構図で、それなりに見せてくれるんだろうと思うほど、ある意味美しいのだけれども。容赦ない。
そのあとにつづく主人公の行動はとても共感できて、私もそうしちゃうかもって思った。そんな主人公に言葉をかける恋人がまた素敵で…。
というような、ある意味うっとりしてしまうような場面ですが、やっぱりニ度見たくない。
とはいうものの、時折、現実世界なんだけど怪しい世界*ファンタジーか奇妙な世界の入り口のようなシーンもあり、全体的にセピア系でまとめられた色使いやしつらえはとても美しい。
わざと焦点をぼかしたような映像、凝りに凝ったエクステリア、インテリアが美しい。
加えて、恋人役がラファロ氏。脳梗塞を患った後の復帰後第一作と聞く。そんなこと微塵も感じさせない。まだ、セクシーな香りが振り撒かれる(『コラテラル』の頃のように全開とはいかないけど)。
ニ度見たいと思わない映画なので☆0としたいけど、映像、ラファロ氏で☆40点です。