ネコのミヌースのレビュー・感想・評価
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猫さんは見ていたのね
原作はアンデルセン賞も受賞したアニーMGシュミットさんの児童文学で十か国以上で翻訳出版されているそうな。日本でも動物変身物は狐に狸、鶴の恩返しなどお伽噺の定番、化け猫じゃホラーだしキャット・ウーマンは女傑もの、オランダの方はちょっとファンタジー、お国柄の違いでしょうか。
もともと猫は綺麗好きで女性的ですがミヌース役のカリス・ヴァン・フォーテンさんはすこぶるキュート、犬が苦手な筈なのにご主人のティベ (テオ・マーセン)はどう見ても犬顔、オランダでは人気のコメディ俳優さんらしいがもう少しハンサムでないとミヌースが可哀想、なんて思ってしまいました。猫たちも演技と言うほどではないが撮り方が上手いせいか頑張っているように見えました。猫の集会は都会では見なくなりましたが何を話しているやら、猫語が分かったら面白いでしょうね、シュミットさんも屋根の上の猫たちを見て本を思いついたのでしょう。
化学薬品ときたので「エリン・ブロコビッチ」ばりの社会派コメディでもいけるかと思いましたがそこは子供向けなのか悪行退治もそこそこでしたね。子供たちやニャンコ好きには外せない一本でしょう、男どもはヴァン・フォーテンさんに癒されてください。
重要なのは金魚のカーテン
ある化学物質に触れて人間になってしまった雌猫と、記事を書くことができずクビ寸前の新聞記者が、街を揺るがす陰謀を暴く。
新聞記者の部屋には、金魚柄のビニールカーテンで仕切られたシャワーがある。このシャワーは独立した空間ではなく、彼の部屋の真ん中に唐突に存在している。
残念ながらこのシャワーが使用されることは映画の中では一度もない。観客は、猫であるミヌースが赤い金魚に興味を持ち、カーテンの中に入ったミヌースの姿を見たいという欲望を掻き立てられるだろう。
しかし、ついに最後まで彼女はグリーンの服を着替えることもないし、シャワーを使って体を洗うこともないのだ。観客はこのことに少し失望を覚えながらも、彼女が実は猫だから水で体を洗わないという子供でも知っていることが、その理由だと分かっているのだ。そして、その観客の失望と諦めこそ、美しい秘書を得た新聞記者の決して表には出さない内面に他ならない。
だからこそ、この新聞記者が魅力的なミヌースに対してジェンダーやセックスの水準で相手と係わることがないという不自然を、観客は受け入れることができる。
使われることのないシャワーが部屋のど真ん中に鎮座し、しかも男の一人住まいには似つかわしくない赤い金魚柄のカーテンが架かっているという仕掛けの意味はこういうことである。
猫の仕草や習慣が抜けきれないミヌースを演じる女優がいい。屋根の上を忍び歩きする姿や窓を叩く手が猫っぽい。
どこで手に入れたのかはさておき、持っている鞄まで同じトーンのグリーンでまとめられたファッションがとても素敵だ。
だが、映画の中でこの服を着替えることは一度もない。彼女の服装が変わるのは、エンドクレジットの背景にエピローグ的に流れる8ミリ風の画の中である。
あと一歩
猫、子ども、冴えない地方新聞の記者と、コメディーの要素は揃っているのに物足りない。
ヘボ記者の成長のリアリティーがちゃんと描かれていたら、心からたのしめただろう。
ミヌースがよくえががれていただけに、ちょっと残念。
ファンタジーの裏にリアリティー有り。
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