「nananana nananana sheets of egyptian cotton」アップタウン・ガールズ 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)
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クルーレスや17歳のカルテのブリタニーマーフィにはカルトなファンがいるがいずれも助演だった。すべて見たわけではないが主演であげるとすれば(ブリタニーマーフィの代表作は)この映画だと思う。
わたしも多数の映画ファンも少し肥えた初期のブリタニーマーフィ=クルーレスの「タイ」がすきだった。よく笑い、無垢で、人の好さがあらわれていた。タイにコアなファンがいるのは、タイの人物像がブリタニーマーフィ本人を反映しているからだった。
が、当人は痩身になることへ強迫的な使命感をもっていて、周囲から拒食を疑われるほどにどんどん痩せていった。ただ人気としてはこの映画の前後年が絶頂だったと思う。
よく覚えている映画。
子役時代のダコタファニングの代表作でもあった。また、ヘザーロックリアといえば平成期にゴシップが生業みたいなセレブだったがテレビ寄りだったこともあり映画でみたのはこれがはじめてだった。
親心を失った母親。子供心が失われた子供。そのシッター。と恋愛と業界と悲喜こもごも、が描かれる。胸をうつ曲線もあり、なおかつ当時(ものすごく)オシャレで先鋭的な映画だった。映画内でながれるnananana nananana sheets of egyptian cottonていう歌も耳に焼き付いている。
わたしは前に彼女の出演映画(ラーメンガール)にこんな形容を書いた。じぶん的に気に入っているので引用する。
『ぼろぼろに泣いてアイシャドーが流れ落ちた女の顔──というものがある。あれがブリタニーマーフィーほど似合う女優はいなかった。あの顔で巻かれたらひとたまりもない。コメディとハッピーエンドと非防水メイクが似合った。』
──
さいきんVODで『ブリタニー・マーフィ人気女優 死の真相』(2021)というドキュメンタリーを見た。Why it took so long?と思った。おぼろげな情報しかなくて、ずっと、知りたかったことだった。そしてこれを見てしまうと後期ブリタニーマーフィをもはや同じ気持ちで見ることができなくなった。
亡くなって以来彼女の死について疑問をもってきた。このドキュメンタリーを見て、その概要がわかった。ソシオパスに取り付かれ、財産を使い尽くされ食い物にされ次第に衰弱し、ついに死んでしまった。理不尽できのどくな話だった。
死の成因は夫のサイモンモンジャックにあった。当時(2007年)ブリタニーマーフィの結婚相手(モンジャック)を見たとき、強烈な違和感をおぼえたのを思い出した。
よく「関わってはいけない人」──というのがある。
その記事や動画では、ゆうめいなインフルエンサーやユーチューバーがどんな人に関わってはいけないかを縷述している。
どうだろう。あなたは関わってはいけない人がわからないほど愚かですか?
人が捕食者に絡め取られるのは複層の因子があると思う。
関わってはいけないほどの人ならば「関わってはいけない人」の説明動画を見るよりまえに、自然に察知し回避できる洞察力がなければ、けっきょく「関わってはいけない人」を避けることなどできはしない。
そんなのは大人なら自然に身についていなけりゃおかしい見識。
つまり、関わってはいけない人を、誰かに教えてもらうのはおかしい。ひるがえって、関わってはいけない人を解説するそのインフルエンサー/ユーチューバーもおかしい。
恐怖をかんじているとき落ち込んでいるとき弱っているときに、道が開かれると、人はそれにすがる。ことがある。ごく一般人が詐欺に遭ったり、カルト宗教に嵌まったり、反社の片棒を担いだりするのは、無知よりも、そこに主因がある。
そもそも世のなかでは、関わりたくない人であっても、仕事や立場上の故由により、やむなく関わるのであって、関わらずに済むなら、もとより関わりはしない。
また、わが国ではほとんどの人が関わるか関わらないか取捨選択するほどの多彩な人間関係をもっていない。交際が狭かったり内輪や孤独に生きているひとが圧倒的に多い。コロナによって尚更それが顕著化している。
にもかかわらず「関わってはいけない人」の解説が人気をあつめるのは、敵視するにんげんをそこに当て嵌めたいから。加えて、それがじぶんでないことを確認したいから──もあるだろう。
いずれにせよ「関わってはいけない人」に興味をそそられるほとんどの人が、生まれてこの方、人と深く関係したことなどない人たちばかりだろう──と個人的には推測している。
人は、人と関わらなければいけない。そうしないと、何も知ることができないから。それをしないと自分自身がわからないから。
この世界でもっとも恐ろしいのは自分自身の馬鹿を自覚していない人。自らの馬鹿を知ることが「関わってはいけない人」を知るよりも先であるなら、誰も捕食者などになりはしない。
よって人はそのアイデンティティが成立するまで当面は、誰とでも関わってみるべきなのだ。
──が、ブリタニーマーフィが捕食者に囚われたのは人気女優の重圧によって正常な判断ができない状態だったから──だ。それを知ったうえで絶頂期の映画を見るとむしょうに哀しくなる──という話。