「【今作は、死刑廃止論者の元大学教授が身命を賭して、死刑廃止及び冤罪の害を問うた逸品である。】」ライフ・オブ・デビッド・ゲイル NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【今作は、死刑廃止論者の元大学教授が身命を賭して、死刑廃止及び冤罪の害を問うた逸品である。】
■雑誌記者・ビッツィー(ケイト・ウィンスレット)は死刑廃止論者だった同僚コンスタンス(ローラ・リニー)へのレイプ及び殺人により死刑を宣告された死刑囚のデビッド・ゲイル(ケヴィン・スペイシー)に指名され、死刑執行前の3日間で彼のインタビューを行うことになる。
彼は教え子で落第生だったバーリンへのレイプ事件で大学教授の職を追われた後、死刑廃止論者だった同僚コンスタンスの殺人の罪で死刑を宣告されていた。
しかし、ビッツィーは彼が無罪ではないかと思い始める。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・私は死刑制度賛成論者である。
それは学生時代に学んだ刑法、刑事訴訟法で”疑わしきものは罰せず。”を叩きこまれたが、その後に”極悪なる者は、その罪を償うべし。”と言うハムラビ法典に合点が行ったからである。
近年であれば、映画化された死刑制度が廃止されていたノルウェーのウトヤ島での若き男女を大量虐殺をした男は、刑務所内でゲームをしたり、所内での自由を満喫しているようであるし、日本で言えば京都アニメーションの何の罪もない多数の男女を放火により殺害した男の所業は許し難く、一罰百戒の意味もあり、死刑は必要だと思っているからである。
・だが、今作を見るとケヴィン・スペイシー演じるデビッド・ゲイルと、同じく死刑制度反対論者であったローラ・リニー演じるコンスタンスの身命を賭した主義主張を見ると、少し考えがぐらついてしまう。
更に言えば、自分を落第させたデビッド・ゲイルにハニー・トラップを仕掛けたバーリンへの大学側の追求も甘い。
・雑誌記者・ビッツィーが、縛られ顔をビニールで覆われたコンスタンスが窒息死する様を見た際に被害者の脚が苦しみの余り、バタついていない事に気付き、自ら同じ状況下で顔をビニールで覆われた際に確認するシーンや、彼女が真意を把握し裁判所に向かう際に告げられたデビッド・ゲイルの死刑が行われた事を知り泣き崩れる姿もむなしい。
・更には、数日後に彼女の元に送られて来た、デビッド・ゲイルが息子が大切にしていた熊のぬいぐるみに入っていたテープを彼女が再生するシーン。
そこには、デビッド・ゲイルと一度だけ愛を交わした同士であるコンスタンスが自らの意志で窒息死する様と、カメラを振り返るデビッド・ゲイルの表情が記されていたのである。
<今作は、死刑制度反対論と冤罪の恐ろしさをメッセージとした社会派サスペンスの逸品なのである。>