小さな中国のお針子のレビュー・感想・評価
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山河に響く青春讃歌
ずっと気になってたので、観ました。
すごくよかったです。なんて言うか、冒頭で山水画ですか?みたいな急峻な山々が出てきて、たぶん毛沢東主席を讃えてるとおぼしき歌が流れてきただけで、あぁ、アタリだなーと分かるコレ、何なんだろう。
名作や傑作って、冒頭の20~30秒で分かる気がする。逆に言うと、名作や傑作は、冒頭の20~30秒をも無駄にしない。
青年たちは「再教育」のために山村に送られてる訳なんだけど、結局みんな目覚まし時計の恩恵を受け、バイオリン演奏を聴き、朝鮮映画の字幕が読めるからかな?鑑賞後、彼らに内容について語ってもらうという。もう、興味津々よね、文明に。
お針子が(欧州の)本の影響でブラジャーを仕立てて、それを見た祖父が危惧するシーンとか、マラリア?に罹ったルオが川に落とされたり、柳?の枝で背中ピシピシ叩かれてるのとか、可哀想なんだけどちょっと面白かった。ザ・民間療法。
まぁ街に戻ったらいくらも手に入るとは思うが、可哀想に、ルオ&マーに本を盗られたメガネ。 彼の蔵書は、魯迅とかの中国文学、バルザック、スタンダール、フローベール等の仏文学、ドストエフスキー等のロシア文学、が主だったみたいですね。
赤と黒、途中で止めてたなぁ。ボヴァリー夫人は読んだ。魯迅は、狂人日記と阿Q正伝は読んでる(20年ぐらい前だけど)
この映画を観て、やっぱバルザック読んどいた方がいいなと思い直しました。
ルオはイケメンでイケイケな感じで、マーは大人しくて優しい感じね。著者であり監督である人は、マーのモデルかな。
お針子は、中絶が可哀想。 まぁ、同意のことではあったようだけど、、 知識も手段もなさそうだもんね、、(避妊の)
彼女の出奔の理由を「(バルザックとかの影響で)女性の美しさは宝だと気付いた」みたいな文言でまとめてたけど、そうなのかな? 自分を変えるためじゃないかしら。
ともあれ、やっぱり実体験っていうのは強いですね。説得力が違う。
最近、自分のなかで和モノ(※日本文学)が続いてたんだけど、改めて向こうのものを読みたいなってなりました。読書欲が刺激された。
文化大革命「下放」の青春ドラマ
下放政策とは、若者が強制的に農村へ行かされ、農作業を通じて社会主義思想を学ぶこと、ただ結果的に教育の機会を失い、下放を受けた世代は無学歴・低学歴ということになった。下放政策を扱った映画は悲惨なものが多く、特に「シュウシュウの季節」はその代表で、ラストはかなりの衝撃でした(個人的には余り好きではありません)。
この映画のほうは、そういう点ではかなり趣が事なり、ある種ほのぼのとしています。日本の万灯流しのようなものが、中国にもあるんですね。
微苦笑的な視点が素敵
とてもよくできた作品。リアリティを保ちつつ露骨でなく、風刺の効いたドラマなのにファンタジック。険しい山峡という舞台がまず重要な役割を果たすが、DVDではやはりその厳しさも美しさも物足りない。いつか映画館で、できれば状態のいいプリントできちんと見たいと思う。
文革の悲喜劇と言えるが、映画はもっぱら3人の青春譚を追いながら、文化の衝突から生じる変化や作用をユーモラスに描いていく。この微苦笑的な視点がいい。あの頃はバカだった、と懐かしむ感じ。
あの頃が中国の青春時代だったのかも、と部外者としては呑気に思ったりするが、迫害を受けた人々のことを思うと笑えない。笑えないが紛れもなく現代史の1コマだ。焚書とは!
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