無冠の帝王
解説
「暁の偵察」「狼火」と同じくリチャード・バーセルメス主演する映画である。「暁の偵察」「つばさ」のジョン・モンク・ソーンダースとW・R・バーネット合作のストーリーからロバート・ロードが脚色し「恋の花園」「歓楽地帯」のジョン・フランシス・ディロンが監督したもので「国境の狼群(1930)」「喰人島征服」のフェイ・レイ、「キック・イン」のレジス・トゥーミー、クラーク・ゲーブル、「地獄の一丁目」のロバート・エリオット、オスカー・アフェル等が助演、カメラは「狼火」「便利な結婚」のアーネスト・ホーラーが担任。
1931年製作/アメリカ
原題または英題:The Finger Points
ストーリー
星雲の志を抱いて都へやって来た南部生まれの若者ブレッケンリッジ・リーはかねての希望通りある新聞社に職を得た。同じ社に働く女記者のマーシャルとリーは間もなく親密となったが彼女は同僚のブリージーからもおもわれていた。時に暗黒街に突如殺人事件が起こり、編集長はこの危険なギャング・ランドへ出張すべくリーに命じた。リーの派遣を知ったキャングの方では新聞紙上に自分立ちの秘密が発表されるのを恐れ、彼を買収してしまおうと百方手を就くしたが悪を掃蕩せんとするリーの決意はなかなかに固かった。ギャングは襲撃してリーに傷を追わせた。傷を癒すため入院しているリーを慰めたのはマーシャであった。かくて彼ら2人の恋は日毎に深まり結婚の話にまですすんだが、貧しい2人にはその望みを果たすだけの蓄えがなかった。リーは今さらのように莫大な買収金をハネつけたことを後悔した。そしてギャングの首領で自分を殺そうと図っているブランコに会ったリーは今後心を入れ換えることを誓った。ブランコはリーにすくなからざる金を与えた。ギャングと連絡を取って発表する記事のためリーはたちまちの内に腕利きの記者になった。こうした交際を続けてその図太さを増して来たリーはある時ギャングが新しく経営する賭博場のことでブランコを尋ねた。相当の口止め料をよこさなければ紙上にそこの黒幕をバラしてしまうと脅したのだった。ブランコは彼らの支配者であるナンバー・ワンにその旨を伝えた。覆面したナンバー・ワンは自らリーに面会して決して真相をあばかぬことを条件に10万ドルを渡した。マーシャはリーが以前と大分様子が変わったのに疑いを持っていたが彼は共にこの街から離れようと言いだした時にはやはり喜んで同意した。しかるにこの時リーを出し抜きマーシャを獲んとするプリージーによって賭博の記事は新聞に発表された。リーは自分の運命がどうなるかを知って愕然としたが、それは到底逃れ得ぬところでえあった。電話がかかって来た。死を予告する魔の手は迫った。そしてマーシャの忠告を退けて銀行に赴いたリーはブランコ一味の機関銃に見舞われた。やがて彼の死が報ぜられた時、市民は職に殉じた英雄としてリーの行為を賛美した。彼の秘密を知る者は残された愛人のマーシャだけだった。