劇場公開日 2001年4月7日

「そこに人生がある」山の郵便配達 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0そこに人生がある

2018年8月14日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

幸せ

 中国は漢民族と満民族、それに数多くの少数民族で成り立っている国である。山の人々は山で暮らし、あまり平地に降りてこない。そこに自分たちの居場所がないことを知っているからだ。それでも若い人を中心に、少しずつ故郷の山を離れる人々がいる。そして電話もインターネットもない故郷と、下山した人々のいる都会を結ぶのは、昔ながらの手紙である。そしてそれを届けるのが本作品の主人公親子なのである。
 息子は父とともに父の歩んだ郵便配達の道を歩く。どのような道を辿り、どのような町や村でどんな人に郵便を配達し、また預かっているのかを知る。そこには様々な人生があり、郵便配達員との様々な係わり方がある。父がそれらの人々を大切にし、また信頼関係を築き上げて来たことを息子は知ることになる。それはとりもなおさず、父の人生そのものなのだ。ささやかでつつましい世界だが、人に優しくする包容力のある豊かな精神と、寛容な人生観。息子は父の偉大さを知り、自分の父であることを誇らしく思う。
 素晴らしい親子の、とてもあたたかい数日間を描いた秀作である。中国はやはり広大だ。こういう映画を作る才能が多分たくさんいるのだろう。ちなみに犬の演技も非常によかった。

耶馬英彦