「依存症へ至る挫折と弱さ」失われた週末 Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
依存症へ至る挫折と弱さ
総合:70点
ストーリー: 70
キャスト: 75
演出: 70
ビジュアル: 60
音楽: 65
才能溢れる若き日の自分は、将来の成功を信じて疑わなかった。それなのに現実を突きつけられて、何度挑戦しても挫折を繰り返してしまって自分の弱さを制御出来なくなる。主人公ドンのアルコールに溺れるそんな過程がよく描かれていて、何故にこうなってしまったかが納得できた。同じアル中を主題にした映画の「男が女を愛する時」は、弱さに言い訳つけて依存症になるのに無理やり綺麗な理由づけをしようとしていたように見えたので、こんなふうに正直に挫折と弱さを見せてくれたほうが素直に受け入れられる。
他にこの映画で良かったのは登場人物。見ていて殴り飛ばしたくなるほど脆さを制御出来ない情けなさ丸出しの主人公に加え、面倒見の良い兄と献身的な彼女と厳しさと優しさの同居するバーテンダーが主人公の周囲で物語を紡ぐ。いい人だらけでなぜここまでしてくれるのかと正直疑問符がつくくらいだが、なんとかしてやりたいという愛情や人の情けの大切さをわからせてくれる。依存症は個人だけの問題でなくて周囲を巻き込むし、また個人で解決出来る問題でもないということを描いている。
アルコール依存症は依存症という病気であり体に起きる化学反応であるから、酒をやめようという意思だけで簡単にやめられるものではないと聞く。何年もやめられなかったものがこれで解決するとは到底思えなくて、結末にはあまりに楽天的すぎるゆるさがある。男の情けなさに途中いらいらもしてくる。依存症の解決だけの話ならば、もっと専門的な治療法を組み込めばいい。だがアルコール依存症の話だけにとどまらず、夢破れて苦悩し挫折しもがきながら落ちていった男の絶望の半生と、なんとか彼を立ち直らせようとする周囲からの救いの物語が良かった。