我等の生涯の最良の年のレビュー・感想・評価
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きつい現実なのに温かい
巨匠の懐かなあ。戦勝国とはいえ厳しい現実はあった。それをほんのりとホームドラマ風に仕上げる。登場人物はほとんど優しく温かく帰還兵を迎える。平和と人々が営む新しいステージ、メッセージはきちんと伝わってくる。ひとつの演技やカット割りに妥協しない演出。
本筋と関係ないけど、早い段階でヒロシマのセリフ、日本刀や日の丸を息子へのみやげにするシーンが印象に残る。
爆弾ひとつで戦争が終わるセリフとか、反戦もしくは厭戦感、傷慰兵への差別や偏見、社会復帰しようともがく帰還兵。考えさせられることも多い。
「生涯で最良」とはそういうことか!
BSプレミアムの録画を1年ちょっと寝かせていましたが、ようやく鑑賞。
「生涯の最良」とは何?と思いながら見始めましたが、戦争から帰ってきた3人のことが明らかになるにつれ、それはどうでもよくなりました。たまたま帰郷するために乗った輸送機で出会った同郷の3人-年齢も境遇も異なる-が打ち解け合って友達になるところが、単純にいいものだなぁと思いました。その後もいろんな場面で会えば呼び合う仲でしたが、今の自分にはそういうことがないので、うらやましいような思いでした。
その対極にいるのが、フレッドの妻。華やかだが心が通っていない、見栄にまみれた上辺だけの世界にしか生きていない人物でした。フレッドの給料では「幸せになれない」と言うセリフが決定的でした。多分この考え方では一生幸せにはなれないでしょう。全く何も分かっていない、戦争も国のことも人の想いも何一つ。
そう思うと、「生涯で最良」とは、生涯を通して良い関係の続く人と出会えたことなのだということに思い至りました。
最近見た過去の名作映画
1947年のアカデミー賞作品賞受賞作品。同じ年に「素晴らしき哉、人生!」も候補に上がったが受賞できなかった。個人的には「素晴らしき哉、人生!」の方が良いと思うのだが・・・
いずれにしても気持ちの良いラストであった。割とよくある話なので、2人が最終的に結ばれるのは大体の人が予想できたと思う。ただ、一旦2人が別れて疎遠になったはずなのに、親友の結婚式で再会して、二人がただ見つめ合っただけでハッピーエンドとなるのは、かなり長い映画の割に、ちょっとあっさりしすぎで、やや安直な演出ではないか。もうちょっとひと捻りかふた捻りくらいあって、ハッピーエンドをもっと盛り上げて欲しかった。
あと、このタイトルに違和感あり。彼等にとって最良の年かもしれないが、そうなると翌年以降はそれ以上にはならないということになってしまうので。
勝ってもそれなりに辛かった戦後
WWIIで従軍し、同郷へ帰還する道中で仲良くなった米兵3人。
両義手の若き水兵Homerは、中流家庭と思しき邸宅へ、
元銀行マンの中年軍曹Alは、コンシェルジュやエレベーターボーイが居る超高級アパートメントへ、
そして戦地で英雄となった大尉Fredは、線路と高架橋に近いボロ家へ、
それぞれ帰宅する。
“Mrs. Miniver”では、開戦によって従来の社会的階級を超えた新たな価値観の到来を予感させましたが…、軍隊の階級は、戦前から引き継がれた社会格差を逆転させることはできないのだと、冒頭から冷ややかな現実を目の当たりにします。ひょっとすると焦土と化した惨敗国の方が、一発逆転のチャンスが転がっていたのかも知れません。
彼らが元の家庭に、そして戦後の社会にどう溶け込んでいくかを丁寧に描いており、その内容は教科書のように立派で分かりやすいです。まぁ少々綺麗事が過ぎるという気がしないでもありません。
しかし、撮影を開始した1946年に、これだけ冷静に大戦を分析し、映画として発表していることに驚きます。WWIIを美化せず、また勝利した国家や兵士を英雄視することなく、戦後のアメリカを国民目線で公平に描写していると思いました。戦争の意義、原爆の後遺症や日本兵の所持品、硫黄島の話題が軽く出て来ます。76年経ってもまだ民間人の苦しみが続くことを知っていたら、原爆投下を再考したでしょうか。
Alの娘Peggyは、まさにアメリカの良心の象徴として描かれています。帰還した父親に、国内戦線はしっかり守れたから心配しなくていいのよと、模範的国民のような発言をしたり、悪夢にうなされるFredを優しく介抱したり。その上、勤務先は病院(車には赤十字らしきマーク)という彼女。ドラッグストアで働くFredを憐れむように見つめるのは、命懸けで戦ってくれた復員兵に理想の職場を提供できない母国の不甲斐なさを嘆いているのであり、愛がなく苦しめるだけの家庭環境から、誰かが(Fredを)救わなきゃ!と意気込むのは、友の不幸を見て見ぬ振りしてはいけない、助けないとダメだ!という、アメリカらしい(建前の?)正義感なのです。略奪女ではなく、むしろ自由の女神です。
圧巻なのは、遥か彼方まで地上を埋め尽くした、解体待ちの無数の戦闘機。戦後は手の平を返すように用済みで邪魔となり、廃棄・再利用される機体の山。職も妻も失い、故郷に居場所を見出せなかったFredと重なります。
戦争は体験した者しか理解できない。
命を預けることになれば、自ずと人を見る目が直感的に養われる。融資を決めるAlやFredの新たな雇用主が、復員兵の気概や度胸を素早く見抜く辺りには、単なる仲間意識や共感以上のものを感じました。それは、Mr. Miltonが声高に述べた国家の理想に近付くために、最も大切なもののように思えました。
個人的なベストシーンは、機内で先に起きたHomer君が、雲上の朝陽に静かに感動する所ですね。直後不安に駆られるように表情が曇りますが、生きて帰れて良かったのだと、辛くなったら思い出して欲しい。。
なぜ ”the best years of our lives” なのか…、勝利の余韻と共に、愛と希望に溢れていた時代…ということでしょうか。
それにしてもあれだけの飛行機が余っていたなんて…、日本との国力の差を痛感します。
***
◯ the Three on a Match superstition
ひとつのマッチで煙草に火を付けると、1人目で敵が気付き、2人目で狙いを定められ、3人目が撃たれるということから、不吉な行いとされたよう。
WWI 起源説が有名みたいですが、色々な説があるようです。
“I think they ought to put you in mass production.”
“….. in the army I've had to be with men when they were stripped of everything in the way of property except what they carried around with them and inside them. I saw them being tested. Now some of them stood up to it and some didn't. But you got so you could tell which ones you could count on. I tell you this man Novak is okay. His 'collateral' is in his hands, is in his heart and in his guts. It's in his right as a citizen.”
“Our country must stand today where it has always stood, the citadel of individual initiative, the land of unlimited opportunity for all.”
誰かに愛され受け入れられる幸せ
疑問に感じながらも遂行した戦地での任務の辛い記憶に苦しみ、周囲の人々の反応に更に苦悩する退役軍人の姿を丁寧に描いた作品。
両手を失った朗らかな青年ホーマー(ハロルド・ラッセル)が、フィアンセとの幸せな未来を望みながらも悩み苦しむ姿が切ない。
互いを思い率直に語り合う愛情深い家族の中心となり夫を支える美しく聡明な妻ミリー(マーナ・ロイ)、切ない恋に悩む純粋な心を持つ娘ペギー(テレサ・ライト)、二人の魅力が華を添える。
モノクロ映像が美しく、優しい気持ちになれる秀作。
ー日本人は家族の絆を大事にするんだね
ー原爆で生き残った人達に放射能の影響が出てた?
ー今更なかったことには出来ない
NHK-BSを録画にて鑑賞 (字幕版)
1946年ごろのアメリカ中流階級
フレッド、ホーマー、アルの三人の話。コメディではない。戦争場面はないので全体的には平和なストーリー。
一番若いホーマーの物語とも言える。
沖縄戦?帰りの三人の退役軍人。全員が沖縄にいたかまでは読み取れなかった。
アルは元銀行員。
ホーマーは、高卒の海兵隊。両手の先がない。鉤爪がついている。リアルに。あとで調べたところ、そういう人をキャスティングしたのだという。だから妙にリアルだったのだろう。
フレッドは、B-17のパイロットだった。しかし、元はドラッグストアの店員。このあと、建設業になる。
この映画が当時の退役軍人にどう受け取られたかまではわからない。私は、たまたま軽い気持ちで見てしまって、ラストどうなるかに引き寄せられてエンディングまで観た。
戦争が終わっても景気は悪いままなので、帰国できてもそんないいことばかりではないということ。新婚だったフレッドは、奥さんと気持ちは離れている。中年の銀行員だったアルは、もとの銀行に戻れたが、複雑な思いを抱えている。
おおまかなストーリーは、対日本戦から戻った海軍、陸軍、空軍の軍人が同じ町に戻って仲間になるという話だ。
生きて帰れた上に、恩給ももらい、誇らしい退役軍人というキャリアであるはずだったが、世間的にはそんなでもなかったということ。
自殺を考えるとか、トラウマになって苦しむ姿はあるにはあるが、そこまで暗い話には持っていっていない。
ここから朝鮮戦争、ベトナム戦争へ突入してゆく前の前の段階。
ちゃんと「反戦」になっている
陸海空、それぞれの復員兵たちの「戦後」を描いた、
人間ドラマ。
(順不同)
・スーツより軍服を着てほしいとゴネる派手好きな妻
・両手を失った婚約者を必死で支えようとする彼女
・戦時の悲劇を引きずった男に惹かれる軍人の娘
・傷痍軍人に対して「無駄な戦争だった」と言い放つ男
・元の職場に戻ると、尊大な上司に変貌していた元部下
・復員兵融資制度といいつつも審査に慎重な銀行
・戦地の記念品(日本刀など)に興味ゼロの息子
なんとか故郷に戻ってきた元兵士たちに、
現実の風は冷たいし、なじめない。
兵士の苦しみは、兵士にしか分からない。
ラストシーンが結婚式で終わるのが救いといえよう。
派手なアクションや、長台詞があるわけではないが、
だからこそ、心に沁みる良作に仕上がっている。
こんな良い映画を知らなかったなんて。。。
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