「ヒューマニズムに満ち溢れたワイラーの傑作」我等の生涯の最良の年 sugar breadさんの映画レビュー(感想・評価)
ヒューマニズムに満ち溢れたワイラーの傑作
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冒頭の乗り合い飛行機の場面から観る者の心をグッと掴んで離さない。機上から見る街の様子と呼応して帰郷の喜びが溢れる。その後いくつものエピソードを重ねながらも、170分という長さを全く感じさせない。
戦勝国であっても戦争の苦悩は色濃く残る。三者三様の戦後をリアルに描く。シリアスとユーモアの絶妙なさじ加減。
特にホーマーとウィルマのパートは、複雑な人間の感情に涙なくしては見られない。寝室でパジャマに着替えるシーン、ホーマーが義手を外し現実を晒した後「言葉がないだろう。君は家族が言う様に引越していいんだよ」と語りかけるのに対して、「言葉はあるわ。アイラブユーよ」と返すウィルマが本当に素晴らしい。
ラストの結婚式のシーンがまた秀逸。義手の指輪交換をじっくり写し、超えられなかった心の障壁が氷解したことを示すと同時に、引きのカメラでフレッドとペギーの視線を捉える。皆が新郎新婦に駆け寄る一方で二人はお互いの立場を瞬間で理解し、キスを交わす。この効率的かつ一見シュールとも言えるショットにワイラー監督の懐の深さを実感し感服させられた。
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