劇場公開日 1977年4月29日

「タルコフスキー世界デビュー作であり官能映画」惑星ソラリス Kenkuさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 タルコフスキー世界デビュー作であり官能映画

2025年8月23日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD、映画館

知的

癒される

ドキドキ

この作品は1977年に神保町の岩波ホールでの上映初日の午前の回で見たと記憶してます。その時私は二十歳。
映画情報誌で形而上学的なSF映画だと言う説明。かなり混むだろうと思って行ったが観客は私を含めて五人ぐらい。
この作品は1972年のカンヌ映画祭に出展され、審査員特別グランプリをとっているのですがほぼ無名のソ連の監督作品なので5年遅れで細々とした上映でした。その後の「鏡」「ストーカー」「ノスタルジア」「サクリファイス」が次々と普通の映画館で上映されるようになりました。
日本で一般に認知されるのは1980年の「鏡」上映以降です。
鏡は日本の映像作家に影響を与えました。モダンな映画作家でした。1986年に亡くなった時はショックでした。知的映像を世界に与えて去ってしまった。ジョンレノンが亡くなった時と同じような喪失感を感じました。
惑星ソラリスに戻ります。映画「惑星ソラリス」はSF映画ではありません。恋愛映画。官能映画。自然からの癒しを渇望する映画なので、映画の見方を間違えないように。初歩的な間違いをして評価をする人がいます。
この作品は私の映画ベスト10に入ってます。官能映画としてはヒッチコックの「めまい」と双璧です。
どのシーンが脳に来るか?
「妻」ハリーが夜になると部屋に来て、椅子にショールをかけてベッドに入りますが翌日は椅子に掛けたショールが二枚になる。
ハリーが悩む姿は現在の21世紀に生きる人類よりも真に人間的です。
タルコフスキーが21世紀の今の日本を見たら悲しむしかない。消費と生産の循環しかしていない。こんな21世紀になって先人に申し訳ない。情け無い。
くだらない消費映画ばかりでただただ申し訳がないです。

どこが官能的に美しいか?
水草が湧き上がる水流にたゆたう姿。
自然は人類のように地球に反逆的ではないから癒される。
レビューを書いてきたらタルコフスキーが得難い映画作家だと思い返しました。五つ星しかない。

Kenku