「失われたのは世界ではなく物語の面白さ。レックスくん、他にもっと食べるべき人が居るよ!」ロスト・ワールド ジュラシック・パーク たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
失われたのは世界ではなく物語の面白さ。レックスくん、他にもっと食べるべき人が居るよ!
遺伝子操作により蘇った恐竜たちが引き起こす大騒動を描くSFパニックアクション『ジュラシック・パーク』シリーズの第2作。
前作の4年後、イアン・マルコム博士はジョン・ハモンドから「サイトB」と名付けられた恐竜島の調査隊への参加を依頼される。恐竜の恐ろしさを知る彼は断るが、彼の恋人サラが既に上陸している事を知り、渋々その依頼を承諾。調査隊と共に島へ上陸するのだが、そこでは恐竜を狙うハンター団が幅を利かせていた…。
監督はスティーブン・スピルバーグ,KBE。
○キャスト
イアン・マルコム…ジェフ・ゴールドブラム。
マルコム博士の恋人でもある古生物学者、サラ・ハーディングを演じるのは『妹の恋人』『逃亡者』の、レジェンド女優ジュリアン・ムーア。
音楽はジョン・ウィリアムズ。
「最低続編賞」や「最低脚本賞」などでラジー賞にノミネートされてしまった本作。なる程、確かにコレは…。
子供の頃、確実に観たことがあるはずの作品なのだが、冒頭で女の子が襲われるシーン以外、全くと言って良いほど記憶に残っていなかった。子供心にも、なんか微妙な映画だと思ったのだろうか。間違いなくインパクトはあるのに…不思議だなぁ。
唯一記憶に残っていた冒頭のシーンもそうなんだけど、パニックホラー映画の要素は前作から大幅にパワーアップしている。
サラがガラスの上に取り残されるところとか、Tレックスが影になってテントに映し出されるところとか、ちっちゃい恐竜がオッさんに飛びかかるところとか、草むらの中からラプトルが襲ってくるところとか、本当にハラハラドキドキする描写が多いし、それらが全て上手い。
恐竜のCGのクオリティも上がっているし、レックスは2頭も出てくるしで迫力満点の恐竜パニックが楽しめる。
結論から言えば、つまらない映画では決して無い。
むしろ普通に面白いパニック映画だと思う。
じゃあなんでこんなに評価が低いのかといえば、どうしても看過し難い問題点があるから。
①キャラクター、特に仲間達の魅力が一切ない!
前作でも大概問題児だった恐竜気狂いのハモンド。
4年前あれだけの問題を起こしたのにも拘らず、性懲りもなくまた少人数での調査隊を結成する。しかもマルコム博士の恋人を送り込むことで、彼が島に行かざるを得ない状況を作り出すという策士ぶりを披露する。
もうこいつが最大の悪役やろ。
そのくせ、ラストはなんか良いことを言って物語を〆るのだからタチが悪い。
さらに、全くマルコム博士のいうことを聞かないサラ。
今回のヒロインなのに、魅力が一切ないどころか、大抵のトラブルはコイツのせいだったりする。
マルコム博士は早くこの女と別れた方が良い。
メカニックのハゲたオッさんが英雄的行為の果てに食べられてしまったけど、間違いなくレックスくんが食べるべきだったのはこの女です。
そして、マルコム博士の娘ケリー。
お父さんと全く似ていないことを指摘されるが、そのことに関しては謎のままである。
こいつも人の話を聞かない。
体操アタック!が物語のシリアスさを削いでいる🤸♀️
前作に登場した子供達、レックスとティムは、否応なく惨劇に巻き込まれたため同情することが出来た。また、彼らの成長は物語を進めるのに欠かせない要素であり、彼らと交流することでもたらされるグラント博士の変化は感動的だった。
それに引き替え、ケリーに関しては勝手についてくるわ特に物語には必要ないわ、その上シリーズにおいてあれだけ避けていたはずの恐竜殺害をやってのけるわ、もうなんのために登場させたのか分からん。
これはあれか?本作には「女と子供は言うことを聞かん」というメッセージが込められているということなのか?
極め付きは元環境テロリストのニック。
この人もサラ同様、やることなすこと裏目に出る。恐竜の赤ちゃん助けとる場合かっ!💦
ニックの真の目的は、ハンター団に捕獲された恐竜を助けることにあり、檻から逃げ出した恐竜たちはハンターの装備や人員に甚大な被害を与える。
このハンターたち、登場時は『マッドマックス』(1979-)のチンピラ並みにヒャッハーしていたのだが、実は結構話がわかる。自分たちを命の危機に晒したにも拘らずマルコム御一行を助けてくれたし。特にリーダーのハゲ、ローランドは普通に統率力のある頼れるおじさんで、なんなら作中一二を争う好人物である。
そのため、味方であるニックの起こした行動が、ただただ残虐な仕打ちのように思えてしまう。これでハンターたちが非道な存在ならいくら殺されてもOKってなるんだけど、そうじゃないからなんか後味が悪い…。
特にローランドの銃から弾を抜いたことを誇らしげにアピールするところ!お前マジで余計なことすんなよ!ローランドさん死ぬところだったじゃねえか!結果としてアメリカ本土にレックスが上陸することになったし…。本当にやることなすこと裏目に出る男だよニック!
②脚本に問題がある!
というのも、本作は誰が見てもわかるように2本の映画を無理矢理一本にしたかのような、歪な構成になっている。何故かラストの30分でエメリッヒ版『GODZILLA』(1998)みたいになってしまうのだ。
たしかに、T-レックスがアメリカを蹂躙するという展開は燃える🦖🔥であれば、『1』(1993)の焼き直しのような島でのイザコザを全て取っ払って、恐竜がアメリカの大都会で大暴れすると言う映画に振り切ってしまえば良かったのに。
島を舞台にするなら、マルコムチームとハンターチーム、そして恐竜軍団の三つ巴という描き方も出来ただろう。あるいは都会を舞台にするなら、レックスやラプトルが民間人に襲いかかるというド派手な恐竜パニック映画が作れただろう。ジャングルもやる都会もやるというどっちつかずの態度が、結果として映画を散漫なものにしてしまった。
面白くなる要素がたっぷりとあっただけに、映画の出来に不満の声が寄せられたのもよくわかります。
流石スピルバーグ、問題が多いとはいえ本作も十分面白い映画です。ただ、『1』の完成度が高すぎた。あれと比べてしまうと、どうしても見劣りしちゃうよね。
なお、『1』同様に本作も吹き替えのレベルがバリ高いので、吹き替えファンにはおすすめ♪
ご指摘の通りで、元々は3作目の予定だった恐竜の本土上陸をスピルバーグの都合で本作に押し込んでますからね…正に2本を無理矢理1本にしてます。
1作目の面白さと、本作もスピルバーグが引続き監督だということで、我々の期待感が上がっちゃってるのもガッカリの要因でしょうね。
随所に面白みはあるのですけどね~(笑)



