ローズのレビュー・感想・評価
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ベットミドラーの芝居がとんでもない
D誰がどうみてもジャニスジョップリンをモデルにした作品。
主演のベットミドラーの芝居がとんでもなく、あの唯一無二な歌声やパフォーマンスまでジャニスそっくりなんです。
顔は全然似ていないのに、ですよ。
それとその物語もすごい。
彼女の深い孤独と、それを振り切るための刹那的な生き方がものすごく描かれているんですよ。
そのラストのステージも圧巻とも言えるでしょう。
メインテーマと言える「ローズ」も見事で、気がつくとそれはもうベットミドラーの物語になっているんですね。
いや、久しぶりだったけどやっぱり面白かったです。
60年代のアメリカの傷だらけの青春を象徴する女性シンガーを熱く描いた音楽映画の秀編
音楽映画としては充分過ぎる程にパンチの効いた作品で、主演のベット・ミドラーの独特な個性とマーク・ライデル監督のストレートな感情表現、そして量感あるカメラワークが一つに融合した成果であろう。ミドラー演じるローズのアクの強さ、男とは対等以上の付き合いに拘る対抗心の強さを持つエゴイズムの女性であるが、こころの何処かでは常に愛する人が傍に居なければ落ち着けない弱さも持っている。そんな不安定な精神状態で、歌うことに全てを捧げる姿は美しく、また哀れでもある。そんなローズの人生の舞台裏を、ライデル監督は男と女の思いやる感情を巧みに描いた「シンデレラ・リバティー」同様の温かい眼差しで見詰めている。この人間の弱さを繊細に拾うヒューマンな姿勢が、個人的には熱い心模様に誘ってくれた。実に正直で、汚れの無いドラマ作りが成されたアメリカ映画だと思う。
またこの作品は、60年代のアメリカ社会の不安定さを背景にして、音楽シーンのヒロインローズの生き様を、その時代を反映した一人の象徴として描いている。ベトナム戦争が終結した時代の流れは、すでに60年代を過去のものにした。如何にこの10年で大きく変わったことであろう。その意味でこの音楽映画は、70年代最後に記録しようとした、アメリカの傷だらけの青春へのレクイエムであると云えよう。強烈なセックスアピールと迫力ある歌唱で観衆のアイドルとなったローズへの、作者たちの熱い思い入れを強く感じる。映画は時代を映す鏡であると共に、その創作に賭ける制作者たちの思いもスクリーンの奥に記録されるものだ。それが奇麗に映し出された時、心に響いてくるものになる。
安定した歌唱力と表現力を兼ね備えたベット・ミドラーが最高の演技をしている。巧さとか演技力という前に、ローズその人に成りきった迫真の表情が素晴らしい。それをビルモス・ジグモンドのカメラが的確に且つ自由奔放に捉えている。ライデル監督については、「シンデレラ・リバティー」の時に感じた特長を再び感じた。それは会話シーンにおける登場人物の表情の演出が的確であること。無機質なカッティングは見られず、台詞と表情の間合いを丁寧に編集している。登場人物が何を考えどう思い言葉を発しているのか、観ていて実に分かり易いのだ。これは演出力でもあるが、本当に人の心と顔の表情の関係性を知り尽くしている大人の視線である。ライデル監督自身、とても魅力的な人物ではないかと、勝手に想像している。
あるロック歌手の自滅への燃焼を余すところなく丁寧に、迫力あるカメラワークで捉えたマーク・ライデル監督の、人情劇としても充分優れた音楽映画の秀編である。ベット・ミドラーの圧倒的な歌唱のステージシーンから、彼女を取り巻く男たちとのドラマも見応えがある。今年の新作の中でも上位に挙げたい。
1980年 11月13日 ニュー東宝シネマ2
ベット・ミドラー!!
10年ほど前に鑑賞後、度々観ている作品。
ジャニス・ジョプリンをモデルに、ローズという女性シンガーの波瀾万丈な歌手人生を描いている。
もちろん豪快で破滅的ななローズの振る舞いや、女としての苦悩やらは観ていて爽快でもあり切なくも痛くもあり、音楽業界のシビアさなども垣間見えて映画としても十分面白い。
だが最大の見所はベット・ミドラーの圧巻のライブだろう。
彼女の本当に命を削るようなパフォーマンスや歌唱に恵まれた映画だと思う。
音楽も素晴らしい。
特に序盤でローズがステージで歌う「男が女を愛する時」という名曲は、私もなんとなく知っていたが、こんなに、こんなに映像での歌唱パフォーマンスで鳥肌が立ったのはこの映画が初めてだった。
終盤で歌われる「Stay with me」では映画の観客さながらに興奮し、泣いてしまった。
そしてエンディングで流れる「Rose」は今や世界中カバーされ、(個人的にジブリの「おもひでぽろぽろ」のEDがカバーで一番好き)有名だ。
落ち込んだ時、空っぽになったときにローズのパフォーマンスに勇気と命の息吹をもらう。
これからも観ていくだろう。
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