「原作本の読書で浸るべき世界だったのかな…」老人と海(1958) KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0原作本の読書で浸るべき世界だったのかな…

2022年4月24日
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鑑賞方法:DVD/BD

何十年ぶりかで、NHK「100分で名著」の
ヘミングウェイスペシャルを
視聴した関係で原作を読み再鑑賞した。

ジョン・スタージェス監督には
「荒野の七人」や「大脱走」等、
西部劇を中心にたくさんのアクション映画を
堪能させて頂いた。
だからこの映画が彼の監督作品とは
意外な感じを受ける。

映像美と名優スペンサー・トレーシーの演技
に支えられ、キネマ旬報では洋画第3位の
高評価を受けた作品だが、
私にはなかなか没入しきれなかった作品だ。

映像的には、
当時の最先端の合成技術で
ロケとスタジオ撮影分を上手く融合させて
いるのだと思う。
しかし、現代のCGの時代を上廻って
この作品の映像価値があるとしたら、
なんとか頑張って全ての海上シーンを
ロケ撮影すべきところだったのだろうが、
そうは出来なかった結果、残念ながら
現代のCG作品に負けてしまうのは必然だ。

また、基本的にほぼ一人しか登場しない物語
の映像化は難しかったのだろうと感じる。
原作をなぞるようなナレーションの多用は
原作そのものを上廻れないことを示している
ようで映画への没入感の阻害になるし、
一人主人公の独り言は小説では
違和感はないが映像の中では
リアリティを奪ってしまう。

映像芸術として、例えば、
主人公とカジキの心の交流については、
折角の名優のキャスティングなのだから、
言葉ではなくサメに食われていくカジキに
主人公の表情で寄り添う等の演出を
期待したかったのだが、
私には、どうしても原作を上廻ることの
出来ない映画化であることを
証明しているようにも感じられた。

この物語は総じて、
それほど長くもないので、
原作本の読書で浸るべき世界だったのかな
と思った。

KENZO一級建築士事務所