ロアン・リンユィ 阮玲玉のレビュー・感想・評価
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多角的視点による「伝記」映画
1920~30年代に上海で活躍した中国の映画女優・阮玲玉(ロアン・リンユィ)の半生を描いた1991年の香港の伝記映画で、1929年に阮玲玉が映画初主演する頃から1935年に25歳の若さで自ら命を断つまでが描かれている。主演のマギー・チャンがベルリン国際映画祭で銀熊賞(女優賞)を受賞した。なお、デジタルリマスター版DVDや4Kリマスター版公開時には邦題が『ロアン・リンユイ 阮玲玉』と「イ」が大文字になっており、検索で引っかからない可能性があるので注意が必要。
マギーが阮玲玉を演じる一般的な再現パートを中心としながら、現存する阮玲玉の出演映画の映像も使用され、さらに阮玲玉と親交があり撮影当時存命していた女優・黎莉莉(劇中ではカリーナ・ラウが演じている)ら映画人へのインタビューや、映画製作過程でのマギーやレオン・カーフェイ(映画監督・蔡楚生役)、カリーナら出演俳優とスタッフによる登場人物や時代背景についてのディスカッションも挿入されるなど、多方面から光を当てることによって実在の人物を立体的に浮かび上がらせるという特殊な構成となっている。映画の舞台裏まで見せることによって「これはあくまで映画だ」ということを表明しつつ、実際に残る映像や証言さえも絶対的に確かなものではないことも暗に示し、さらに現代を生きる出演俳優たちの素の意見を映し出すことによって、事実や史実というものの不確かさや不安定さ、実在の人物を題材とする作品の虚構性と真実性をあぶり出していくスタンリー・クワン監督の手腕が素晴らしい。そういう意味で「歴史」や「伝記」というものに対する示唆的な映画となっているとも言えるだろう。
阮玲玉がその犠牲者の1人となった芸能人のプライベートを標的にするイエロー・ジャーナリズムによるスキャンダリズムという古くて新しい問題も大きなテーマとなっており、また満州事変とそれに続く第一次上海事変の際に中国国民党政府が反日的な映画の製作を禁止し、日本軍の空襲から避難した阮玲玉ら心ある映画人たちがそれに憤るという描写もあった。
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