「小説書けなくなっちゃうよ?」恋愛小説家 MAPLEさんの映画レビュー(感想・評価)
小説書けなくなっちゃうよ?
最初は強迫性障害だからなのか人が嫌がる発言ばかりする孤独おじさんなのだが、見るからに人との関わりに飢えた構ってちゃんで、かえってお茶目で可愛かった。ジャックニコルソンの極端な人間の演技はとても好き。極度の潔癖症の設定なのだが、石鹸を使うたびに捨てる以外は特に描写が見当たらない。
傷ついたゲイのサイモンとその愛犬バーデルと苦労人のウェイトレスとの交流を通して、薬を飲んで治療をし、良い人になろうと努力していく。でも、サイテー男の気分で書くから当たっている恋愛小説家なのに、良い人になったら社会に溶け込める一方で食べていける生業がなくなってしまわないか心配。
苦労人のキャロルが、主人公ユドールの資金援助で病気の息子を24時間診てもらえるようになり、10年ぶりくらいに自分の感情に目を向けられる余裕ができて大泣きするシーンがとても印象深かった。肉体的には昼間はウェイトレスで夜は子供の面倒、精神的には背負うものが多いから大変すぎて、年齢も若く美しく輝かしい年月を犠牲にしてどれだけ自分を長い間殺していたかを物語っていた。人間、お金と自由もある程度必要。でも、ユドールのようにその両方と良心があっても人、との関わりを大切にしないとそれもまた孤独。
心身ともに傷ついたゲイがユドールとキャロルどちらにとっても大切な友人となり、ゲイだからこそ、作品に恋愛感情抜きの温かい人間関係がはっきり示されて、とても良い作品だった。キャロルが、ユドールを下の名前でメルビンと呼ぶようになる流れで、一気にユドールの心もほぐれていく。
グリンチの良い事をすると心がくすぐったい感じになる演技は、この作品のジャックニコルソンを踏襲しているようだなと思った。