「生きることの素晴らしさが沁みる」レナードの朝 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
生きることの素晴らしさが沁みる
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BS10(録画)で鑑賞(字幕)。
原作は未読。
心洗われ、考えさせられる名作だった。研究畑から不慣れな臨床の場へと駆り出されたセイヤー医師が嗜眠性脳炎の患者と出会ったことから物語が動き始める。嗜眠性脳炎の治療に邁進するセイヤーの姿は、医師の使命感よりも研究者の好奇心が勝っていたように思う。いちばん重症なレナードに新薬を投与すると、奇跡的な回復を見せる。
病により30年止まったままだった時間が動き始め、初めての恋をして生きることの素晴らしさを実感するレナード。セイヤーとの間に生まれる友情が温かい。だが、奇跡は長く続かなかった。以降の展開は「アルジャーノンに花束を」に似ている。
新薬が効きづらくなり、後遺症も出始めて症状が悪化していくレナードは、好意を抱いていたポーラに「もう会うのは最後にしよう」と告げる。彼女と踊る別れのダンスが涙を誘う。去っていくポーラを窓越しに見送るレナードの表情が忘れられない。
セイヤーの苦悩も胸に迫る。レナードが苦しんでいるのは、自分が目覚めさせてしまったからではないか。心の何処かに、患者のための治療よりも研究のための治療と云う目的が存在してはいなかっただろうか。だが、何も知らずにいることが幸せだとは限らない。レナードが短い目覚めの時間の中で体験した出来事や感情は、きっと彼の中でかけがえのないものになっているはず。人生の素晴らしさに気づいたセイヤーが最後に見せた行動に感動した。
ロビン・ウィリアムズとロバート・デ・ニーロ。
ふたりの名優の巧みな演技があってこそ、本作は名作たりえていると言っても過言ではないだろう。
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