劇場公開日 2025年1月3日

「ブロンソンと三船氏二人のドロン追跡劇を軸とした互いの文化を超えた友情譚」レッド・サン 矢萩久登さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ブロンソンと三船氏二人のドロン追跡劇を軸とした互いの文化を超えた友情譚

2025年1月5日
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鑑賞方法:映画館

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三船敏郎氏、チャールズ・ブロンソン、アラン・ドロン、そしてウルスラ・アンドレスが華を添える日米仏のスターが共演した西部劇『レッド・サン』(1971)の4Kデジタルマスター版が公開されたのでYEBISU GARDEN CINEMAさんへ。

『レッド・サン』(1971)
三船敏郎氏が社長を務めた三船プロが三船自身を主役の侍役にした企画をハリウッドメジャーに提案、快諾され生れた作品とのこと。
それだけ三船氏が“世界のミフネ”として国際的な知名度と影響力があった証左ですね。
共演のチャールズ・ブロンソンをはじめ、当時日本で人気あったアラン・ドロン、『007』初期3作品を手がけたテレンス・ヤング監督、音楽は『アラビアのロレンス』のモーリス・ジャールを三船プロ側の意向も交えながらキャスティング、選定したのは驚き。

ポスタービジュアルからは『さらば友よ』(1968)以来のブロンソン×ドロンの再共演、本作も男臭い二人の友情譚と想起されますが然にあらず、実際はドロン演じる冷酷非道な悪漢に裏切られたブロンソンと、ドロンに帝から大統領に贈呈する黄金の太刀を奪われた三船氏二人のドロン追跡劇を軸とした互いの文化を超えた友情譚。
企画からきちんと三船プロが参加しているので、いわゆる誤解された変な日本人の描かれ方は許容範囲内に押さえられているので、今観ても違和感なく、普遍性ある娯楽西部劇アクションに仕上がっていますね。

悪人だけど根は優しいブロンソン、終わりを迎える武士の世界に最後まで忠義を尽くす三船氏と二人の見どころは満載ですが、冷徹非道の悪漢ドロンは見せ場も少なく、悪役としても大物感が薄くゲス過ぎて少々もったいなかったですね。ただ二枚目俳優なのに、こういうゲスな悪役のオファーもきちんと受けるドロンには好感が持てますね。
初代ボンドガール、ウルスラ・アンドレスも単なるヒロインでなく男に翻弄される小悪魔の設定も良いですね。

演出面はさすが『007』の初期傑作を手がけたテレンス・ヤング監督、アクションシーンはスピード感とキレがあり、音楽も『アラビアのロレンス』を彷彿とさせる雄大な西部の平原にマッチした「これぞ西部劇!」という劇伴が実に贅沢でしたね。

矢萩久登