「ナチスの看板だったのか?」リリー・マルレーン La Stradaさんの映画レビュー(感想・評価)
ナチスの看板だったのか?
ファスビンダー特集 - その1
僕の学生時代に、鈴木明さんの『リリー・マルレーンを聴いたことがありますか』がベストセラーになり、この歌を深夜ラジオで度々耳にしましたが、今の若い人にも知られているのでしょうか。
第二次大戦時にドイツでヒットした歌でありながら、連合国兵士の間でも愛唱歌になったとされる「リリー・マルレーン」を歌ったビリー(実際の名前はララ・アンデルセン)のナチスと戦争に翻弄された半生を描いた物語です。毎夜、21:57にベオグラード放送から流れたこの曲にドイツ兵も連合国兵も耳を傾けたという逸話の背後にあった彼女の栄光と苦悩が厚く語られます。
ただ、本作は、悪名高い絶滅収容所と彼女と関わりなどドラマチックな脚色がかなり施されていると感じられました。ナチスの宣伝看板に成って行く自分と「ただ歌いたいだけ」という表現者としての自分の自家撞着という点にもっと焦点を絞るだけでよかったのではないでしょうか。
また、個人的には、同じドイツ人でありながら連合国側に立って、前線を慰問しつつリリー・マルレーンを歌い続けた稀代の女優マレーネ・デートリッヒとの対比も観たかったな。
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