「述懐の古典」リバティ・バランスを射った男 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)
述懐の古典
いつか見ようと思っていながら、見ていなかったThe Man Who Shot Liberty Valanceを見た。
個人的にはあっさりした印象の映画で、往年を楽しんだけれど、ジョンフォードなら駅馬車や怒りの葡萄やわが谷は緑なりきや荒野の決闘のほうがいい。
あとでwikiを見たら『クライマックスの決闘のシーンを終盤に持って来ず中盤で行い、終盤で決闘シーンの謎解きの種明かしを行うという前代未聞の展開を持つ作品である。』と書かれていた。
が、「前代未聞の展開」において、名画になったわけではなく、助けた男に恋路を奪われるトムドニファンの哀感に主意がある。とはいえ、それが染みる感じはない。さらりと描き、どう見るか委ねている。
ただ、人がたくさん撃たれて死ぬ西部劇で、ひとつの殺人にどこまでもかかずりあう映画だったと思う。
ジョンフォードもジョンウェインもジェームズステュアートも最盛期は過ぎていて、なんとなく晩年の始まりを感じさせる映画だった。
ところで、往時の西部のダイナーの様子をこれほどつぶさに描いているのは見たことがなかった。その肉の厚みたるや、特大わらじカツにしか見えず、一人前の皿などオーバルのパーティープレートと言っていい。それをヴェラマイルズが給仕している側で、ジェームズステュアートが、たらいかなにかで、おおざっぱに皿をすすいでいる。忙しそうなのだが、口数に比べて動きは優雅。こんなダイナーで皿洗いをしたいと思った。
コメントする