劇場公開日 1972年7月20日

「何故白黒なのか」ラスト・ショー あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0何故白黒なのか

2018年9月3日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

1971年製作なのだからもうカラー時代
なのにあえて白黒で極力劇中と同じ1950年代初めのに撮られたかのように作られている
特典映像の監督インタビューで、カラーだと派手過ぎて原作の雰囲気に合わないからとのこと

1950年代初め
映画ジャイアンツのラストシーンの時代
本作は石油景気に乗れなかった人々がどうなったかの物語だ
西部劇の世界が完全に失われ、それを知っていた世代が消えようとしている
サムは40年前にテキサスのこの町に来たというから、彼はジャイアンツのジェットになれなかったほとんどの人々の一人だ
寂れていくばかりの町に取り残されてる
そこの若者もまた、石油会社に雇われて町から出ていくか、軍隊に入り朝鮮戦争に行くしか無い
町に残っていたら、頭の足りない野球帽の少年のようにの垂れ死ぬのだ
女は女性の武器を使うしかない
裕福で有れば都会の大学に行ける
しかし年をとった女はどうか
亭主の愛を失えばこの田舎町に何があるというのか
高校生の青春物語のようで本作の本当のテーマは
フロンテアが消えた土地=アメリカに何が残っているのか
何も無い、閉館する映画館みたいなものだということ
だから閉館の最終興行は西部劇だったのだ

故に本作はその西部劇とおなじ白黒なのだ

コーチの妻の演技は目を見張る出来
疲れきった老婆のような初登場シーンから、主人公と知り合う内に若く美しく変わり、捨てられて元に戻ってしまうが、またよりを戻そうとする主人公に手を握られてみるみる若返るのだ

町からでられず中年女との不倫で絶望を紛らわすしかない主人公の若者はアメリカそのものなのだ

あき240