「人生って夢といっても間違いではないと思う」欲望(1966) あんゆ~るさんの映画レビュー(感想・評価)
人生って夢といっても間違いではないと思う
1966年イギリス・イタリア合作映画。112分。今年19本目の作品。いままでたくさんの映画を観たと高をくくっていたら、実はそうでないと思い知らしめてくれる作品に出会える。そして純粋に人生が楽しくなる。本作はまさしくそんな作品となりました。
内容は;
1、ロンドンの売れっ子カメラマンは偶然散歩していた公園で気になるカップルを見つけ、隠れながら写真を撮る。
2、しかし、女性が気づき、お金をだすから写真をネガごと譲ってくれと言ってくる。
3、男は女に嘘をついて偽のネガを渡し、現像すると思わぬ犯行が写真に収められていた。
本作は一言で表すならサスペンス。しかし、作品自体にあるパワーはサスペンスを超えてシューリアルなものがあります。本作をわたくしは夜中の2時ころに観だしたのですが、眠気もふっとび一気に引き込まれました。
キューブリックの遺作「アイズ・ワイド・シャット」が好きな人なら本作は絶対に好きになれます。本作のサスペンスは、誰が犯人とか以前にわたくしたち人間の認識能力自体を見事に不安につるし上げています。
そこに作品全体のモチーフとなるカメラという媒体がすごく活きていて、二重にも三重にもテーマが活きています。この調和感がほんとに素晴らしく、観終わったあとの心の浮遊感は本物のアートを観た気分。
ミケランジェロ・アントニオーニ、すごい監督さんがいたものです。今まで知らなかったことが恥ずかしくなるくらい素晴らしい作品でした。
ちなみに原題は「Blow Up」で、業界用語で「現像」を意味するのだとか。それを知ると邦題はもっと工夫してほしかった。この題名だと、観たい人が限られると思いますから。
本作のふわふわ感を体験した次の日から日常が違った視点で見えました。
すごい映画です。