「不条理世界を描いた名作だのとの触れ込みがDVDに書いてあったので,...」欲望(1966) しょうけらさんの映画レビュー(感想・評価)
不条理世界を描いた名作だのとの触れ込みがDVDに書いてあったので,...
不条理世界を描いた名作だのとの触れ込みがDVDに書いてあったので,さぞやどうしようもない状況に置かれた主人公が大爆死するんだろうと思っていたら,全然別の方向だった.しかし優れた映画だった.主人公は写真家として成功しているし,ポストを欲しがる美女と性行為を楽しんでいるし,美術の収集にも余念がない.いくつかの不穏さは映し出されるけれど直接語られることもなく,ミステリのように進展した殺人事件についてもなすすべもなく終わってしまう.そして極めつけは最後のシーンで,何とは言えないけれどとてもしびれた.ボールを取りに行く演技をすることによって,空想の試合が現実のものになったのか.雑に解釈するなら,我々が現実だと思っていることも,空想の徒手空拳でしか過ぎないのであって殺人事件だとかいくつかのことは妄想でしかないとかそんなところだろうか.難解なシーンがいくつかあるけれど,構図やモノの特性を生かした映像美に魅せられて飽きることがなかった.
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