「サスペンスはただの見せかけ」欲望(1966) あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
サスペンスはただの見せかけ
偶然撮った写真に殺人現場が写り込んでいて…という面白そうなサスペンスと思って観たら、おもいっきり肩透かしを食らった
112分の上映時間だか、ヒッチコックならきっちり90分以下にまとめてもっと面白くしかも完結させる
そう本作のサスペンスは尻切れトンボで終わってしまうのだ
つまりアントニオーニ監督に取ってはサスペンスなぞ、どうでも良いのだ
そんなのものを撮りたいのではない
本作で彼が撮りたかったのは1966年当時、世界的に注目され盛り上がったイギリスの若者文化のありさまなのだ
だから当時の若者の憧れをこれでもかと見せびらかすのだ
サスペンスには関係の無いシーンが延々と続く
ベントレーのコンバーチブルを乗り回す
若い売れっ子カメラマン
車には無線がついており秘書に連絡しては対応させる
美人のモデルは選り取りみどり
華やかなファッションシーン
ロンドン郊外のウインザー
そこにRicky Tickというロック界では世界的に超有名ライヴハウスがあり、そこにわざわざ主人公を意味もなく行かせる
当時の特に通に人気のバンド、ヤードバーズの演奏シーンを長々と登場させる
ジミーペイジ、ジェフベックという超人気ギタリストの演奏シーンだ
そして、お屋敷での若者達のドラッグパーティー
そんなのものはサスペンスには何の関係もない
パントマイムのエアテニスは
単に前衛劇団を登場させたかったのかも知れない
いや実は監督の種あかしかもしれない
映画はこれで終わるけど、サスペンスはエアテニスみたいなもんだ、気にするなということだ
つまり当時のイギリスの若者文化に関心が無ければ、本作は観る意味がない
ただ撮影は確かに美しい
写真スタジオのシーンの色彩感覚は良い
しかしそれだけのことだ
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