劇場公開日 1963年3月1日

夜行列車(1959)のレビュー・感想・評価

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5.0夜行列車での人間模様を描いた傑作

2023年1月15日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

初見は、学生時代、ACTミニシアターで鑑賞。
物語の大枠はおぼえていても、不思議な雰囲気を堪能できるポーランド映画傑作のひとつ。

ポーランドのある都市からバルト海沿岸保養地に向かう夜行列車に乗り合わせた乗客たちの人生模様が交錯するイエジー・カヴァレロヴィッチ監督作品。

都会から発車する夜行列車に、黒サングラスの男(レオン・ニェムチク)が発車ギリギリに車掌と交渉の上で乗りこむ。彼の指定席のある個室には、すでに金髪女性(ルツィナ・ヴィンニツカ)がいて、車掌が注意しても居座って退室しない。彼女を追いかけて来た若い男(ズビグニェフ・ツィブルスキ)とのやり取り、黒サングラス男に誘いをかける弁護士の妻、新婚カップル、不眠症の男など、様々な思い・悩みを抱えている中、夜行列車は走り続ける。
深夜、夜行列車が急停車して、警官が多数乗り込んで来て、殺人犯探しを始めて……といった乗客たちへ波紋を投げるような展開になっていくあたり、本作を観る者へ興味を持続させる力強さを持った映画である。

そして何より、疾走する夜行列車を舞台にしていることから、狭い通路を人かきわけながら移動するカメラ、列車の窓から見える風景シーン、時には列車の外側から車窓の内側を映して衝撃を与えるような撮り方など……さまざまな角度から人々とその気持ちまで表現する撮影が素晴らしい。
とりわけ素晴らしいのは、黒サングラス男と金髪女性が相席(2人で1つの部屋)となり、互いの仕草を盗み見するような仕草を捉えたシーンであろう。女が男を読んでいる本の端から見つめたり、男が女を部屋の小さな鏡を通して見たりするあたりが素敵である。

個人的には、『世代』・『灰とダイヤモンド』などで名演を見せてくれたズビグニェフ・ツィブルスキが、本作でも存在感を見せてくれたのが嬉しい。

いろいろと他人の事が気になる乗客たちの姿は人間らしさが出ていてユニーク。
また、偶然相乗りとなったサングラス男と金髪女は最初はギスギスしたものの、女の眼に入ったものを男が取ってあげてから和やかな雰囲気が少し出てきて、互いに事情は話さないものの気になる存在になっていくあたりも心穏やかに見られるのが良い。

イエジー・カヴァレロヴィッチ監督の傑作。

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たいちぃ

4.0夜行列車に乗り合わせた人たちの人生が凝縮された人間絵図

2022年6月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館、TV地上波

「尼僧ヨアンナ」のイェジー・カヴァレロヴィチの代表作。中学時代にテレビで観て感激した映画を漸く劇場で鑑賞する。ある夜行列車に乗り合わせた人たちの人生の苦しみを見詰めた人間絵図。物語の結末がない最後、女主人公がひとり取り残されるラストシーン。ファーストシーンと殺人犯が群衆に取り囲まれるシーンの俯瞰ショットがいい。アンジェイ・ワイダと並ぶポーランド映画のカヴァレロヴィチの地味なこの映画が好き。ストーリーを楽しむ作品ではなく、映像に表現された人間の生きる虚しさを感じる映画。「灰とダイヤモンド」のズビグニエフ・チブルスキーが出演している。その「灰とダイヤモンド」も中学時代に日曜洋画劇場で観たが、こちらの映画程は感動しなかった。

  1981年 6月3日 池袋文芸坐

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Gustav