モン・パリ（1973）のレビュー・感想・評価

ずっと男性が妊娠する題材の作品を観たかったんです。こんな作品あったんですね。しかも、制作は約50年前で主演がマストロヤンニとカトリーヌ・ドヌーブだなんて。

出産を控えたマストロヤンニが体調不良になりモンスターが産まれたらどうしようとナーバスになったり、性転換したそうな男性がでてきたりと、なんだか今っぽい作品でした。ラストは集団ヒステリーによる妄想だったと言われて終わりましたが、出産までしていたら面白いのに。

余談ですが、女性はヒステリーだとずっと言われ続けてきたのですが、このヒステリーの原因が性的虐待だったというのが時を経て公になりました。妊娠出産に係る性的な被害はそれほどの傷を与えるのです。

一つ間違うと問題になりそうな今日的な題材。
でも、エスプリの効いた脚本と演出、演技力の高い俳優達が取り組むとこんなに可笑しいんだ、ということかな。
「？？」
映画冒頭の不安やら疑問はどこへやら、すっかり信じ込んで踊り出す人々。
「あれは集団ヒステリーです。」
騒ぐだけ騒いでテヘペロで済まされてw。それに優しい仲間たち。
いやー楽しかった。映画っていいな。
こんな作品が創れた時代って今より平和だ(興行的には大丈夫だったのだろうか？)。

「シェルブールの雨傘」のジャック・ドゥミ監督のフランス映画らしい洒落たコメディ。カトリーヌ・ドヌーヴとマルチェロ・マストロヤンニのカップルが、私生活の仲の良さを窺わせる内容の物語。なんと男性が妊娠する話が当然の様に進む。百科事典を持ち出して調べるマストロヤンニは、男も時として妊娠する、を見付けられたのであろうか。ドヌーブまで、私たちの子どもなんだからどっちが生んでもいいわ、と宣う。ついには男性用妊婦服？のコマーシャルに担ぎ上げられる。パリの下町を背景に、ままごと程度のコメディを明るく楽しく演じるふたり。ある意味男女平等の社会風刺を狙ったのかも知れないが、気楽に観れるフランスエスプリ。シャンソン歌手のミレイユ・マチューを初めて知るが、力強い歌唱のシャンソンに聴き入る。彼女の歌に乾杯！