「感情をも織り込んだ映像美と雰囲気作りのうまさ」モーリス Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
感情をも織り込んだ映像美と雰囲気作りのうまさ
総合:85点
ストーリー: 80
キャスト: 80
演出: 90
ビジュアル: 85
音楽: 80
同性愛が悪であった時代に、地位も名誉もある家系に生まれて自分自身を隠して生きなければならなかった男たちの生き様を、揺れ動く感情や心のひだまで織り込みながら見事に映像化している。最初は全く期待せずに見ていたのだが、冒頭から美しく撮影される英国の浜辺の風景に魅了される。続いて登場するケンブリッジ大学の校舎の撮影のこれまた見事なこと。相当に美的感覚の優れた人たちが作り上げたのだろう。それに合わせた情感たっぷりの緩やかな音楽もその情景にとても合っている。
耽美な愛の世界であると同時に、人目をはばかり社会の裏側でひっそりと育まなければならない愛でもある。自分の愛を貫くのか、社会に迎合するのか、文芸作品をその映像美で丹念に織り上げて、悪い言葉で一言でまとめるのならばただの恋愛ものにすぎない作品を、壮大な人生の語らいにまとめあげていた。風景・衣装・建物・言葉づかいまでしっかりと作り上げ、人の感情を映像に合致させて雰囲気を作り上げた手腕は素晴らしい。ジェームズ・アイヴォリー監督は「日の名残り」でも似たようなの映像と雰囲気を作っていたので、これはもう監督の感性のなせる賜物なのだろう。
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