モーリス
劇場公開日:2018年4月28日
解説
20世紀初頭のイギリスを舞台に2人の青年が織りなす禁断の愛を描き、1980年代の同性愛を描いた映画として高く評価された文芸ロマン。文豪フォースターが1914年に執筆したものの同性愛という題材のため出版がかなわず、作者死後の71年にようやく出版された同名小説を、「眺めのいい部屋」のジェームズ・アイボリー監督・脚色で映像化した。ケンブリッジ大学に通う青年モーリス・ホールは、良家の子息クライヴ・ダーラムと互いに惹かれ合う。プラトニックな関係のまま学生生活を終えた2人は、それぞれ別の道を歩みながらも交流を続けていたが、やがてクライヴは母に勧められた女性との結婚を決意。傷ついたモーリスは、ダーラム家の猟場番の若者アレックと恋に落ちる。モーリス役のジェームズ・ウィルビーとクライヴ役のヒュー・グラントは本作で第44回ベネチア国際映画祭男優賞を受賞。アレック役にルパート・グレイブス。日本では88年に劇場初公開。2018年4月から、製作30周年を記念した4Kデジタル修復版「モーリス 4K」として、88年公開時には実現しなかった無修正版でリバイバル公開。
1987年製作/141分/R15+/イギリス
原題:Maurice
配給:KADOKAWA
日本初公開:1988年1月30日
スタッフ・キャスト
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ありがちなイギリスの全寮制学校での青春もの。
特筆すべきは若き日のヒュー・グラントの美しさ。
自然に惹かれ合った2人なのに、最後はヒューが世間体を気にして距離をおいてしまってからのモーリスが切ない。
そして窓をみるヒュー・グラントの目には若かったあの頃。
上記内容が男と男、女と女、男と女という枠での恋愛とするならば、誰しも経験したことがある景色、行動であり、この二人によって何かを思い出す作品。
2021年12月18日
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鑑賞方法:VOD
ー 幼かったモーリスに海岸で、男女の性交について、先生が砂に書いた絵から始まるシーン。
そして、ケンブリッジ大学に入学したモーリス(ジェームズ・ウィルビー)は、同窓のクライブ(ヒュー・グラント)とプラトニックな恋に落ちる。
だが、二人は一線を越えず、クライブは弁護士、政治家の道を進み、モーリスも金融の仕事に就く。
クライブは、モーリスの想いを捨てがたいが、結婚をし、モーリスは深く落ち込む。
そこに現れた、猟場番のアレック(ルパート・グレイブス)とモーリスは恋に落ち・・。-
◆感想・・になってません。
・男性同士の恋を描いた映画に初めて触れたのは、彼の「アナザー・カントリー」である。その、余りに耽美的な世界観に、高校生であった(中学生だったかな・・)私は、一気にヤラレタ。
一緒に観に行ったムサクルシイ友人達とは、当然の如く「アナザー・カントリー」ごっこが流行った。(おバカである。)
・その後、邦画、洋画を問わず、数々のLBGTQの映画を観てきたが、汚いとか、不道徳と思った事は一度もない。
私はストレートだが、大学時代に私を”慕ってくれた”友人が居た事が大きいかもしれない。
(流石に、髪の毛を触る程度で、お許しを頂いた・・。)
・恋を抱く相手が、異性である人が多いのは重々承知しているが、人類創世記から同性に恋する人間はある程度の比率でいたのではないか、と思っている。
そして、それを倫理に反しているとか、汚いとか、罪に問うのはおかしいと思う。
<今作では、同性愛者であるモーリスが時代の風潮に合わない自分の性癖に苦悩する姿が、キチンと描かれている。
だが、ジェームズ・アイヴォリー監督はそんな彼の姿を、優しき視点で美しく描き出している。
何よりも、その映像が儚くも美しいのである。
ラストシーンも、とても良いのである。>
■赤江瀑の耽美的な小説群に嵌ったのも、我ながら納得である。
2021年6月28日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
まず、同性愛は、欧米の知識階級必修の古代ギリシャ・ローマ文化では肯定されているが(プラトンはプラトニックのみ)、多数の人々の信仰するキリスト教では原則禁止であること、特に映画の舞台1910年代の英国では、もし誰かに告発されれば作家オスカー・ワイルドのように厳しく懲罰された様子が描かれる。
そんな中で主人公モーリスは同性を愛してしまったのでとても悩み、苦しむ。教会を捨てても有罪であることはどうしようもない。いつまでも結婚に興味を示さないと周囲に訝しまれる。病気ならば治りたいと精神科も受診する。この辺りが特に可哀想だった。
「眺めのいい部屋」と同じ監督ということで、映像もロマンチックで美しかった。
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ヒューグラントの美しさに最初は釘付けになりましたが、話が進む程モーリスの真っ直ぐな愛情、無垢で情熱的なキャラクターの虜になりました。
最初はクレイブ(ヒューグラント)のアプローチからはじまった関係ですが、同じ大学のゲイの先輩が捕まったことから、社会的制裁を恐れて、モーリスに対して距離をおくように…。
その気持ちはわからなくもないのですが、その後連絡も無く突然結婚し、報告の電話も友人の中で8番目だったり、まだクレイブに未練のあるモーリスに好きな女性が出来たと勘違いし、おめでとうと言ったり、クレイブのあまりのデリカシーの無さに途中ドン引きしてしまいました。
ただ、最後、モーリスが別の方を愛していると告白をした後のクレイブの喪失感あふれる表情…
最後のシーンでクレイブが窓を閉めようとした時に浮かぶモーリスの姿。
本当はクレイブもモーリスを愛し続けていたのに、あの時代に愛を貫き通すことを諦めて、自分自身さえも欺いていたのかなと切なくなりました。
歳を取るごとに、自分自身の本当の気持ちを押さえて、世の中に迎合する事ってあると思います。
この映画の前半は、そんな事考えもしなかった無垢な時代を思い出させてくれたし、後半は世の中に迎合しつつも、どこか自分を欺いていく生き方(クレイブ)と、自分を貫いて傷つき迷い苦しみながら進む生き方(モーリス)を魅せてくれます。
自分自身が実際モーリスのように生きていけるか、難しいと思います。
だからこそ、モーリスの存在自体が最後まで魅力的にうつりました。
とってもとっても尊い映画でした。