「彼らの愛や悲恋があったからこそ、今、愛の自由が」モーリス 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
彼らの愛や悲恋があったからこそ、今、愛の自由が
ヴェネチア映画祭銀獅子賞に輝く、名匠ジェームズ・アイヴォリー1987年の作品。
20世紀初頭のイギリス。ケンブリッジ大に通う青年2人の禁断の愛を描く。
同性愛を描いた作品にありがちな生々しい絡みや濡れ場は無く、2人の関係はプラトニック。
映像やロケーションは美しく、美術や衣装も素晴らしく、話も奥深く、非常に芸術性の高い文芸作になっている。
ごく平凡なモーリスと上流階級のクライヴ。
先に想いを表したのは、クライヴ。やがてモーリスも想いが抑えられなくなっていく。
そんな時、思わぬ事件が。彼らの友人が同性愛の罪で逮捕。
クライヴは弁護士を目指し、母親が決めた女性との結婚の道を選ぶ。
モーリスは同性愛者である事に苦悩しながら、狩猟番の青年と出会い愛し合い、クライヴとの再会や別れを繰り返す…。
キャストでは何と言っても、クライヴ役のヒュー・グラントの美青年ぶり! そりゃあその後、人気スターになるわな…。
お互い心の底では惹かれ合い、運命的な相手。
別れ、それぞれの道や出会い。
切なくも、また別の幸せや愛が。
原作小説は1913年に執筆されたが、スキャンダラスな内容や作者自身も同性愛者だった事もあり、死後の1971年に出版。
後の『君の名前で僕を呼んで』に通じる、偏見に晒されながらも秘めたる想いを貫く者たちへの、アイヴォリーの愛を感じる。
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