無防備都市のレビュー・感想・評価
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今見ても衝撃的な部分はあるのだが、面白みには欠けるかも
ロベルト・ロッセリーニ監督による1945年製作(103分)イタリア映画。
原題または英題:Roma citta aperta、配給:イタリフィルム、劇場公開日:1950年11月7日。
脚本にフェリーニが参画しているとても有名な映画であるが、あまり面白さや凄さは感じなかった。まあ、恥ずかしながら、イタリアがナチス・ドイツに占領されていたこと自体の認識が無く、歴史を知りナチスを知るという点では、ためになった気はした。
ただ、ナチス将校の劣等民族との言葉に抗って拷問に耐えて死んでしまうレジスタンス組織の活動家マルセル・パリエロの描写には、イタリアの国威発揚の意図を感じてしまって、少々興醒め。
一方、主人公であるアルド・ファブリッツィ演じるレジスランス運動に協力する神父は、ナチュラルな演技でいながら実に毅然としていて、好感を覚えた。しかし現実は厳しいということか、彼も結局、反逆罪で銃殺されてしまう。
そして、逞しく生きていたアンナ・マニャーニが、ナチスに捕まってトラックに乗せられた 内縁の夫を、制止の手を振り払って追いかけていくが、あっさりと後ろから射殺されてしまうシーンは、未だ少年の息子が駆け寄る絵もあってか、やはり衝撃的。
最後、神父銃殺をずっと見届けた少年たちの姿に、ロッセリーニ監督の強い思いは感じさせられた。
監督ロベルト・ロッセリーニ、原作セルジオ・アミディ、脚本セルジオ・アミディ 、フェデリコ・フェリーニ、撮影ウバルド・アラタ、編集エラルド・ダ・ローマ、音楽レンツォ・ロッセリーニ。
出演
アルド・ファブリッツィ、アンナ・マニャーニ、マルセル・パリエロ。
あの時の出来事を
素晴らしかった
ローマ解放へ!! 映画の力強さを感じる。
占領下のレジスタンスを冷徹に描いたネオレアリズモ映画の衝撃作
第二次世界大戦末期にイタリアは混乱と苦難の特殊な事情に置かれて、それは占領したナチス・ドイツ軍の残虐性を如実に表していると思う。敗戦国イタリアに対してナチス・ドイツが補強した政治は、主人としての地位を思う存分悪用するものだったという。それに対するレジスタンスの記録として制作されたのが、この映画史に画期的な変革をもたらしたネオレアリズモを象徴する『無防備都市ローマ』である。ゲシュタポと戦う反ファシスト地下運動の記録を基に、小説家セルジョ・アミディがまとめた脚本には、まだ無名のフェデリコ・フェリーニも参加している。デ・シーカやヴィスコンティとはひと味違うロッセリー二の演出には、敗戦後の社会不安の悪条件の中、現実を直視した映画制作を敢行する意欲と情熱が直に伝わる。題材は違うが、同じ戦時下に作られたフランス映画の大作「天井桟敷の人々」に感じた映画に賭ける力強いエネルギーに圧倒されてしまった。
それは俳優たちの真剣な表情を観れば明らかであろう。レジスタンスの緊張した心理状態は刻々と変化を見せて、インサートされる残虐非道なナチスのベルクマン少佐のシーンと対比されて緊迫感を深めていく。地下運動の指導者ジョルジオがゲシュタポに追われ同志フランチェスコのアパートに逃げ込む発端から、彼らの良き協力者でもあるドン・ピエトロ神父が反逆者の宣告を受けて無残に銃殺刑にされるラストまでの男も女も、そして子供たちまでも、それは演技の枠を超えて迫真の表情を見せる。ロッセリーニの演出力と、この状況下にいたイタリア人が本来持っている表現力の豊かさの賜物であろう。特にフランチェスコがナチスに連れ去られ、追い掛ける婚約者ピーナが殺されてしまうシーンのアンナ・マニヤーニの演技と、それを捉えた臨場感のある鋭敏なカメラワークは、残虐そのもので衝撃的だった。劇映画(フィクション)のドラマティックな演出とは違う、このリアリズムの迫真性に公開当時はもっと衝撃を受けたのではないだろうか。そこに至るまでのピーナの行動力や生活感が確りと描かれているからこそ、そのシーンが更に訴える力を持っている。そしてピーナの息子マルチェロが泣き叫ぶ悲劇の場面は、イタリア映画のひとつの特性を表していると思った。オペラの国イタリアの正しくドラマの感情表出。
恋人マリーナの裏切りによってゲシュタポから凄惨な拷問にあうジョルジオ、対してピーナの孤児との別れを惜しんで逮捕を逃れたフランチェスコと、緊迫した攻防の中のそれぞれの命運がリアリズムの真実味とドラマの両面を構築している。ロッセリーニ監督の演出は、室内シーンを安定したカメラワークで撮り、屋外ではカメラの揺れを意識したドキュメンタリー技法で張り詰めた臨場感を印象付ける効果を狙って、独特なドラマを創作することに成功を収めたと言えるだろう。
冷徹な視点によるリアリズムの映画ではあるが、その根底には敗戦から占領の混乱を経験した母国イタリアの人々に対する、作家としての熱い想いがある。そこに私は、ロッセリーニ監督の良心を見た。イタリアが最悪の状態から、このような感動と衝撃のネオリアリズモを世界に知らしめた時代の証明は、とても意味があると思う。レジスタンス運動で命を落とした人々への鎮魂歌も含めて。役者では、名女優アンナ・マニャーニを筆頭に、ドン・ピエトロ神父のアルド・ファブリーツィ、ジョルジオのマルチェロ・パリエーリが特に素晴らしく、称賛したい。
1978年 6月5日 フィルムセンター
神父様の顔が頭から離れない…
抑制された表現にも拘らず、後味の悪さが記憶にこびりつく
映画『無防備都市』の感想です。
ブログではネタバレありで書いています。
『巨匠を観る』企画、15作目(全27作)の映画です。
監督:ロベルト・ロッセリーニ
制作年:1945年
制作国:イタリア
カンヌ国際映画祭 パルム・ドール(最高賞)
【あらすじ】
イタリア敗戦後、ナチス・ドイツに占領されたローマの市民やレジスタンスの人々の物語。
レジスタンス活動に身を投じた誇り高い男達や、それに協力する神父や女性達。
敗戦の中から新しい国を作った市井の人々の、厳しく苦しい日々を描いた作品です。
【感想】
☆☆☆ 面白かったです。
厳しく生きる人々の現実に焦点をあてて映画を作ったイタリア・ネオレアリズモの先駆けとなる作品。
この映画の前と後で映画の歴史が変わったとも言われる作品です。
抑制された表現にも拘らず、後味の悪さが記憶にこびりつくようなシーンが印象的な映画でした。
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評価は、以下のような感じで付けています。
☆☆☆ 面白くない~普通に楽しめた。
★☆☆ 個人的にかなり楽しめた作品。
★★☆ 少し気になる点はあるものの、凄い、大好きと感じる作品。
★★★ この先、何度も観返したいベストの作品。
ブログの方では、ネタバレありで個人感想の詳細とネット上での評判等を纏めています。
興味を持って頂けたら、プロフィールから見て頂けると嬉しいです。
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不在の余韻
この映画に登場する人物はことごとく殺されます。しかし、フランチェスコだけは生き残る。というかマンフレーディとドン・ピエトロたちが捉えられたシーン以降登場していません(はず。)それまで数少ない登場人物の中では、ピーナのあの衝撃的なシーンを作り上げた大きな役であるはずなのに、突然姿を消してしまう。改めて考えてみると少し不自然な感じが否めません。しかし、それが却って想像力をかきたてます。仲間が連行されるところを、運良く免れた後の彼がどう振る舞ったのか。あるいは、彼もまた結局は連行される運命にあるのか。
ある人物の存在を突然切り離す。そういったところにもこの映画のドキュメンタリー性を強めている要素があるように思います。
ドキュメンタリー性。そもそもこの映画はフィクションであ流けれども、しかし見る側の人間にとってはほとんどドキュメンタリーのように映ります。物語的なストーリーというよりも、現実的なものを描くことに注力されている。だから、それぞれのシーンはひょっとしたら、多くの人が目撃した現実の再現でしかない。シーンのためのストーリーが準備されたのかもしれません。それだけに映像のインパクトはやはり大きいです。
二人を尋問する場面では、ドイツ軍の人間が戦争を皮肉る発言が何度か登場しますが、これもまた事実だったのでしょう。殺す側の人間が、その行為を疑問に思う。しかしそれでも殺される人々がいたという不条理。
複雑で練られたストーリーを持つ作品だけが傑作として残るわけではない。例えばある一つの事実、あるいはピーナのあのワンシーンが持つ迫真性のために、この作品はこれからも残っていくのだと思います。
ネオレアリズモの始祖の名作
楽しめました。
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