「日本の映画鑑賞スタイルを変えた一本。だと思う。」ムトゥ 踊るマハラジャ とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
日本の映画鑑賞スタイルを変えた一本。だと思う。
「胸アツ上映」「応援上映」等、『ボヘミアン・ラプソディー』では、「一緒に歌う」「足を踏み鳴らす」等がOKの上映が幾つもあった。
映画は静かに観るもの。それは、上映前の注意事項でも確認されるように、マナーであったし、大人としての常識だった。
でも、今は、それが常識・マナーであることは変わりなくも、だから、映画上映の企画ものとして、「〇〇OK」という上映バージョンが組まれることがある。
そのはしりがこの映画。「マサラ上映」。ラジニカーントさんやミーナさんと一緒に踊る! 「インドでは皆映画館で踊っているんだから、私たちも」なんて、企画を目にした。ミーナさんほど着飾れないが、サリーやパンジャビドレス、クルタ等、お化粧もしてというイベントもあった。羨ましく、興味津々なれど、気後れして、まだ参加できていないけれど。
そんな、人々を動かしてしまうパワーを持った映画。
☆ ☆ ☆ ☆
美女が満載、その美女が媚態を尽くして踊りまくる。声も美しい。異国情緒満載。
男性陣は好みの問題かな? でもラスト、ムトゥが最高にいい男に見えてくるから不思議(笑)。
インドで絶大な人気を誇るスーパースターとな。
日本で言うなら、『太陽にほえろ』や『西部警察』の頃の石原裕次郎さんかな?年齢や貫禄を考えると、ラジニカーントさんの踊りっぷりやアクションの決め具合がほとんど脅威!!!
(㊟1995年制作の映画。トム様がアラ還になる大分前で、50代でアクションやっている人なんていなかった頃)
そのうえ、吉幾三さんばりの笑いもとってくれるマルチプレイヤー。いや、凄すぎる(笑)。
ミュージカルあり、アクションあり、涙あり。ロマンスに、コント…。すご~く深い教え、これが胆?
様々なスパイスを投入して微妙~な配合で創り上げた、まさにマサラカレーのような映画。
手ぬぐいのようなショールが舞う。キメポーズに使われるだけでなく、ヌンチャクのように舞う!!!
アクションはカンフーにも似て、窓から落ちるシーンはカンフー映画?マカロニウェスタン?
ついでに『ベンハ―』にはりあったか?というような馬車の群走あり。
(はっはっはっwww)
昭和初期の映画にも似ている。クレージーキャッツ主演の映画のノリ。植木さんが急にズ―ダラ節を歌いだして皆で踊り出すような感じ。
MVかと思うほど、同じ歌を何回も繰り返してくれるのでつい口ずさみそうになる。
とはいえ、物語は前半は正直、眠くなった。一つのシーンがとても長い。みんな、鑑賞しながら踊っているんだろうな。
休憩をはさんで、
後半は意外な展開。ハラハラする場面、胸が苦しくなるような場面あり。
インドの価値観に目を白黒させつつ、感じ入るところもある。そこまで達観できないけれど。
そんな物語の中で、私の好みは大奥様。要所要所で締めてくれるけど、皆を見守って一緒に笑ってくれる。感情表現が豊かで普通の演技。
主要人物は演技して、歌って、踊って、アクションしてって全部できなきゃいけないのね。
悪役アクション担当も、正体がばれるまでは皆で仲良く踊っているよぉ。なごむなあ。
一回目の鑑賞は字幕と主要人物を目で追うことで終わってしまうけど、2回目以降はバックダンサーやセット・景色にも目を配れて新しい笑いが見つかる。
煌びやかな衣装。独特の色使い。それだけでも眼福。
一見の価値ありです。