ミッションのレビュー・感想・評価
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イグアスの滝
ロバート・デ・ニーロが主役なのかと思っていたけど、やっぱりこの映画ではジェレミー・アイアンズ。そしてリーアム・ニーソンも脇を固めていて、見所いっぱい。
イエズス会の布教活動と、ポルトガルとスペインの領土争い。この三者がイグアスの滝の上の部族を悲劇に追いやってしまう。改宗なんてそう簡単にはいかないと思って観てたけど、意外にも原住民語をペラペラと喋っていたし、コーラスや楽器なども練習できていた。エンニオ・モリコーネの曲も南米の民族音楽ぽい雰囲気を醸し出していました。
結局はポルトガルに土地を委譲する形を取らざるを得なかったが、メンドーサと2人の神父は戦うことを選択する。平和は愛によって導かれると頑なだったガブリエル(アイアンズ)だけはガラニー族の子供たちと教会で祈り続ける・・・
戦いは一方的。ポルトガル軍とスペイン軍がイエズス会を追放するため、原住民を殺しまくる。これが歴史の真実なのだろう。痛ましい。残虐だ。こうやって南米各地に領土を広げたのだと思うと、重苦しくなってしまう。こんなことなら、裁判のシーンでガブリエルが人狩りや奴隷売買を訴えればよかったのに・・・と。
力作
エンターテイメント的要素も満載で、主人公二人の相対する分かりやすい設定もよかった。こうして英雄伝説が生まれるのか? 後半は「七人の侍」的でもあり。受ける迫害の理屈は違うが、ラストは「島原の乱」的でもあり。
本作でも大国の思惑に翻弄される人たちが悲しすぎる。
とてもよかった
高校生の時に映画館で見たのだけど、うっすらとした川や滝の映像以外ほぼ何も記憶にない。クライマックスの合戦は壮絶で、戦争映画のようだった。枢機卿だったか、教会の偉い人が滝をどうやって上るのかと思って見ていたら、川をくだって楽々と到着していた。遠回りルートだったのだろうか。
良作だがまだ白人視点
総合:75点 ( ストーリー:75点|キャスト:75点|演出:70点|ビジュアル:75点|音楽:70点 )
昔から政治と宗教は結びつき、政治は他民族と植民地支配に宗教を利用し、宗教は勢力拡大のために政治を利用する。フランシスコ・ザビエルもスペイン王に日本の植民地化についての情報を送ったと言われている。
しかし一部の現地で布教活動をしている者にとってはそんなことはどうでも良く、自分の宗教観と信念に基づき行動をする。追い詰められても命を懸けて行動をする神父たちと先住民の行動は、この時代のこの地域に数多くあった悲劇のたった一つに過ぎないが、やはりこうして映像で観ると実感がわいて面白い。
だが気になる部分もある。こうして欧州の支配に立ち上がる人々の主人公はやはり白人なのだ。しかもわずか3人だけの白人だ。実際には立ち上がった大多数は先住民なのに、その先住民たちは名前すら出ないままにやられ役として死んでいく。現地の王も時々出てきた少年も、先住民の中の1人扱いに過ぎず、名前も呼ばれないままに白人たちに付き添っているだけ。先住民の歴史でも白人視点の歴史は映画化されても白人中心視点でろくに人間扱いされていない。本来はこの先住民を人としてしっかりと描く必要もあると思うが、イエズス会に心ある人々がいたという結論で終わってしまっている。先住民は当時の白人たちからはもちろん、映画の中で制作者側からも獣とたいして違わない扱いが最後まで変わらなかった。
この思想は映画界では1990年の『ダンス・ウィズ・ウルブズ』まで変わらない。この作品で初めて先住民の1人1人に名前がつき、それぞれの性格と行動が個々に作品内で表現され、1人の人間扱いを受けられるようになる。
漫画「君たちはどう生きるか」とのシンクロ
映画(録画)を見た同じ日、偶然、漫画「君たちはどう生きるか」を読了してました。漫画「君たちはどう生きるか」の中で後で主人公と友達になる、いじめられっ子の浦川君のエピソードがあります。浦川君をいじめるいじめっ子に仕返しをしてくれようとするクラスメイトが現れ、いじめっ子をこてんぱんにしようとするのですが、いじめられっ子の浦川君はそれを止めます。一方映画「ミッション」でデニーロ演じるロドリゴが自分の弟を殺してしまったことに対する自分への罰として重荷(がらくた)を運び続け、谷間を登ろうするシーンがあります。周りがもう十分だ、として重荷のロープを切り離してもロドリゴは納得せず、自ら重荷のロープを体にふたたび巻き付け、谷間を登って行きます。その先にはかつて自分が奴隷商人として生け捕りにしたインディオたちの集落があり、そこにたどり着くわけですが、重荷を運び続け疲労困憊でいるロドリゴに対し、インディオたちが取った行動は。。。この後の場面と漫画の浦川君とのエピソードがシンクロして泣けました。この映画の主人公は神父のガブリエルではないか、というコメントを見かけましたが、この映画の主人公がロドリゴである理由はこの場面にあると思います。あと、この映画のテーマ曲ともいえるエンリオモリコーネの「ガブリエルのオーボエ」がすごく良い。この映画を見ようと思ったきっかけはこの曲にあります。事務所でBGMでかかっていたこの曲がこの映画の曲だと気づき、観てみたいな、と思っていたところに偶然にもBSでやっていたのでした。この曲は本当に英語のtouch(感動させる)という単語がぴったりきます。こころの琴線に「触れる」という言葉と重なり合う感じです。ずっと前の映画ですが、なんとなくキリスト教が絡んで食指がうごかなかったのですが。。。食わず嫌いはよくないですね。
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