「異常者は自分を客観視できない」ミザリー 根岸 圭一さんの映画レビュー(感想・評価)
異常者は自分を客観視できない
ロブ・ライナー監督の作品では『ゴースト・オブ・ミシシッピー』『スタンド・バイ・ミー』が好きだ。今作はそれらと違ってサイコスリラーだが、終始緊迫感のある面白い映画だった。例えばペンギンの置物の向きが伏線として効いているところなど、よくできている。彼の監督としての力量の高さが感じられる。
キャシー・ベイツ演じるアニーには2つの特徴がある。(1)性格が独り善がり(2)現実と空想の境界が曖昧。これらの特徴は『キング・オブ・コメディ』のパプキンなどと共通している。要するに、周りが見えておらず、自分が全てで、自分の世界の中だけで生きている感じがする。言い換えると、自分を客観視する力が欠如している。そういった点では『ナイトクローラー』のルイスにも共通している。
だが、欲を言えばアニーが異常者になる背景をもっと描いて欲しかった。彼女は明らかに正常な精神状態ではない。そのため両親の教育が異常だったとか、幼少期に強いショックを受けたとか、異常になる何かしらの出来事があったはずだ。そこが分かれば人物設定により深みが出たと思う。
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