劇場公開日 2018年7月21日

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「皮肉を更に突き詰めた人間の業を描いた喜劇の恐ろしさ」魔術師 Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0皮肉を更に突き詰めた人間の業を描いた喜劇の恐ろしさ

2020年4月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

制作から暫くたって、「冬の光」と共に1975年に本邦初公開されたベルイマンの喜劇映画。と言って素直に笑えるコメディではない。イギリス映画のシニカルなユーモアを何倍も苦くしたような人間喜劇の不気味さを持っている。「野いちご」「処女の泉」のように分かり易いストーリーを語りながら、演出タッチは「第七の封印」に近い。難解な「沈黙」「ペルソナ」よりは見易いが、この映画にある人間の毒気に嫌悪感を抱く人もいるだろう。ベルイマン演出の多才さと完成度の高さに感心しながら、その演劇的趣向の独特な鋭さ、意地悪さというか人間の業を見極めた達観の視点が恐ろしく感じる。好きではないが、ベルイマンの恐ろしさを最も感じて圧倒された映画の一本。

Gustav