「何故か「おみおくりの作法」と「サラの鍵」が思い出され…」マグノリアの花たち KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)
何故か「おみおくりの作法」と「サラの鍵」が思い出され…
「愛と喝采の日々」「グッバイガール」の
ハーバート・ロス監督の作品で、
キネマ旬報ベストテンでは第22位という評価
だったものの、
いずれも女性の選考委員3名が
ベストワン作品として推していたことに
興味がそそられての初鑑賞に。
正直なところ、中盤近くまでの
“ハレ”の場面ながらも淡々とした展開で、
エンディングは娘が出産を契機として
命を失うか、
あるいは逆にハッピーエンドなのかな、
との底浅い想像から、途中で鑑賞を
止めようかと思ったほどだった。
しかし、糖尿病の娘は、早々に無事出産して
更なる先に先に進む予想外の展開になった。
そして、娘の糖尿病体質の問題という
シビアな問題の中での出産の場面辺りから
それまで伏線を張っていた女性陣の関係が
深まると共に作品の世界に引き込まれ、
最後まで興味深く観ることが出来た。
この作品、特異なのは、
一部に、“死~葬儀”というマイナス的要素
の場面こそはあるが、
“結婚式~クリスマス~出産
~ハロウィン~イースター”
という、“ケ”的な日常生活描写のほぼ無い
“ハレ”の場面だけでストーリーを繋ぐ構成
には大変驚かされた。
そんな中、
娘の棺の前での5人の姿には、
世話をした人とされた側は逆なのだが
「おみおくりの作法」を、
また、子供が産まれたら、母親に対し、
亡くなった娘の名前を付けると告げる
結婚して妊娠した美容師の発言には
「サラの鍵」が思い出され、
登場人物の、口は悪いけれども
心根の優しさに支えられた友情に
目頭が熱くなった。
この作品、主要な登場人物が女性で、
主に女性に支持された作品のようだが、
男女の区別無く、人間賛歌を感じられる
映画ではないだろうか。
さて、感動覚めやらぬ内にと予定した
「愛と喝采の日々」と「グッバイガール」
のハーバート・ロス作品の再鑑賞では、
登場人物のどんな心優しさを感じられるか、
楽しみになった。
