劇場公開日 1985年8月10日

「フジヤマに映えるジャッキー」大福星 因果さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0フジヤマに映えるジャッキー

2023年1月25日
iPhoneアプリから投稿

『五福星』の続き、というわけではないがキャストはほとんど変わらず。ジャッキー・チェン、サモ・ハン・キンポー、ユン・ピョウの3人がカンフー活劇を繰り広げる。まあいつものやつだ。

今回の舞台は日本。富士急ハイランドのメリーゴーランドをジャッキーが身一つでヒョイヒョイ登っていく。ジャッキーは海を渡ってもジャッキーなのだという興奮と安堵。そして彼の背後には峩々と富士山が聳え立っている。正直全体を通して見てもここが山場だったなあと思う。

中盤はほとんどアクションシーンらしいアクションシーンもなく、サモ・ハンの取り巻きたちが織り成すしょうもないコメディが中心となる。天丼ネタや突発的な暴力などコテコテの喜劇表現がこれでもかと続く。ただまあジェスチャーだけでホテルマンに朝食を注文するシーンはちょっと面白かった。ギリギリ伝わらなそうなジェスチャーを全身全霊で披露する取り巻きたちも笑えるし、それを微妙な表情で聞きながらも彼らの要望に精確に応える日本人ホテルマンも笑える。

ジャッキーがアラレちゃんの着ぐるみを被ったまま敵陣に殴り込むシーンもシュールで面白いのだが、途中で脱いでしまったのが惜しい。どうせなら着ぐるみを武具に転用してほしかった。あとユン・ピョウの出番がありえないくらい少ない。序盤5分と終盤5分しか出てこない。その間ずっと敵の人質にされていたというのもかなり情けない。

ただまあ人種的・国家的ステレオタイプを極限まで加速させ、それらを無節操に接続しまくることで結果的に無国籍的な映画空間を立ち上げるという破天荒な映画術はさすがといったところ。ラスボスっぽい学生服でおさげ編みの男は結局どこのどなただったのか、何一つ判然としないのが心地いい。

因果