「誰のものにもならない女、でなくて、女は誰のものにもならないよ!そして前歯の問題」ヘカテ talismanさんの映画レビュー(感想・評価)
誰のものにもならない女、でなくて、女は誰のものにもならないよ!そして前歯の問題
クープ型のシャンパングラスで幸福感に満たされ、ロシェ役のベルナール・ジロドーの細長くて美しい指にうっとりし、クロチルド(ローレン・ハットン)のウェーブのかかったちょうど良い長さの金髪と、体にぴったりで、背中が開いたシルクのドレスが、どこでもなくいつでもない場所に私を連れて行ってくれました。
赴任先、全てが揃っていて、ないのは情婦だけと(頭の中で)ほざいていたロシェ。若くて暇だから、美しく魅力的で謎めいて、相手に何も求めないクロチルドに出会って逢い引きの日々となるのは当然。なのに、自分の勝手な嫉妬と所有欲に絡め取られてしまいました。未熟です。その未熟な男も、クロチルドから離れてキャリアを積み昇進する。10年が過ぎ、ロシェは目元に皺もできて老ける。そして再会したクロチルドは、以前と変わらぬ若さと美しさ、ドレスの色が黒になりフランス語を話さなくなっただけ。
埃っぽい街も、いかにもアラブのモザイクタイルも、クロチルドの住む室内の壁の色も、すべてが濃厚で、観客ができることはただ見つめるだけ。思考放棄。
ベルナールはディオールのスーツを完璧に着こなしていた。後半のヘリンボーンのコートも失神するほどかっこよかった。クロチルドはドレスもボーダー柄のシャツも似合っていて、さすがモデル。二人の着こなし合戦は本当に素敵。それを引き立たせるためか、ロシェの上司も秘書のローズ=マリーもいつも同じ服だったけれど自然だった。
ひとつだけ。ワルツにのせないでください。笑ってしまう…。笑いながらってなんか萎えるというか、やってらんない!になるんじゃないのでしょうか?
おまけ
ハットンの前歯のちょうど真ん中に隙間があって気になって仕方なかった。でも知らなかった!フランスでは前歯の隙間は「幸運の歯」と言われているとさっき(2021.09.20.)知った!ショック!歯に関して日本人は八重歯や歯並びなど批判されますが、国や文化でいろいろなんだから気にしなくていいんじゃないか?前歯のすきっ歯、レア・セドゥにもあるなあ