「風来坊 ~聖書とシェーンとマカロニと~」ペイルライダー TRINITY:The Righthanded Devilさんの映画レビュー(感想・評価)
風来坊 ~聖書とシェーンとマカロニと~
主演のクリント・イーストウッドが監督と製作を兼ねた異色西部劇。
ディテールが違うだけで、ストーリーの骨格はほぼ『シェーン』(1953)。
『荒野のストレンジャー』(1972)との比較で評されることも多いが、訪れた町との因縁が暗示される同作と異なり、本作の主人公は正真正銘の流れ者。
一方でマカロニ・ウエスタンへのオマージュと思しきシーンが幾つも盛り込まれている。
ダイナマイトを小道具に使うところはイーストウッドの出世作『荒野の用心棒』(1964)や『夕陽のギャングたち』(1971)だし、ロングコートの集団やクライマックスで敵のリーダーを至近距離で斃し、今際の際の相手から素性を問われる場面は『ウエスタン』(1968)。主人公はサラからも“Who are you?”と誰何されている。
落とした帽子を挟んで決闘するシーンも『夕陽のガンマン』(1965)を連想させるし、ジョン・ラッセル演じる悪徳保安官の風貌も、よく見りゃリー・ヴァン・クリーフそっくり。
シリアスな展開とは裏腹に、楽しみながら撮影していた監督の様子が目に浮かんできそう。
主人公をならず者だと思ったサラが最初は「ガンマン」なんて陰口を叩いていたのに、あとで「ガンファイター」と言い直すなど、けっこう含み笑いも。
巨体と独特の面相から悪役が多かったリチャード・キールが根は善良な敵側の用心棒・クラブを演じてるのもユニーク。
タイトルは『ヨハネ黙示録』の第四の騎士から採られているらしいが、宗教的メッセージはたぶんないと思う。
終盤になってようやく主人公のガンプレイが見られるが、シリンダーごと交換する拳銃なんてほかの西部劇で見たことがない。
誰か銃器に詳しい方、レビューで解説して。
NHK-BSにて視聴。