劇場公開日 2018年8月4日

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「19世紀末の自然豊かなプロヴァンスで過ごした穏やかな夏の日の想い出」プロヴァンス物語 マルセルの夏 Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)

3.519世紀末の自然豊かなプロヴァンスで過ごした穏やかな夏の日の想い出

2021年1月5日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

フランスの長閑な田舎を舞台にしたコメディ映画「わんぱく戦争」「ぐうたらバンザイ!」のイブ・ロベール監督の作品だが、以前のユーモア溢れる作風は影を潜めて、淡々とした大らかな演出が19世紀末の時代を再現する。小学校教師の厳格な父親と若くて美しい母親を尊敬し愛する9歳の少年が過ごした夏の日の出来事。母の妹夫婦と家族同様に触れ合う描写も良く、当時のフランス中流階級の生活感が偲ばれるノスタルジックな作品。夏のバカンスの舞台になるプロヴァンス地方の荒涼としながらも原始的な美しさが残る自然の背景、、その中で寛ぐ家族の生き生きとした表情が羨ましい。想い出の中では美化された記憶が蓄積していくであろうが、それを承知しても、この映画の温もりは失われた人間らしい安らぎの時を刻んでいる。ロベール監督がユーモアの先にある温もりに到達した愛すべき佳作。

Gustav