冬の旅のレビュー・感想・評価
全24件中、21~24件目を表示
スキャンダラスな無鉄砲娘にワクワク
南フランスでヒッチハイカーが凍死したニュースをヒントにした実験的映画。
ヌーベルバーグの先駆者のアニエス・ヴァルダの劇映画の最高傑作と言われている本作。1985年ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞。
畑の側溝の死体から始まり、遡って目撃者や関わった者たちの証言の映像化に挑戦。
さすらう若いストレンジ・ウーマン。
17歳のサンドリーヌ・ボネールが主人公モネを演じる。
体格も良く大人びている。
四角顔のワシ鼻で顔つきもワイルド。まったく物怖じしない。
人に媚びない。
ふてぶてしいアウトロー。
ぶっきらぼうな仕草。
汚い爪、臭そうな体臭。
でも、そこがカッコいい。
しかし、魅力と脆さは紙一重。
過酷な運命が待ち構えていることはわかっているが、その過程を目撃することはじつにスリリング。
彼女のさすらいの目的や人生の価値観、信条はなんなのか? 果たしてそんなものがあるのか否か?
若い女性がひとりで放浪。
彼女が生きてゆくためのツールはその若い肉体と無鉄砲な危うさだけにも思える。トラブルに巻き込まれる確率は恐ろしく高いはず。
綱渡りのサバイバル。しかし、じつにあっけらかんとしていて、自暴自棄。
気になって仕方ない。
じつに、スキャンダラス。
女中のヨランダを演じるヨランダ・モローの独特の芝居がくさいけれども、おかしみがあって好き。
死から始まる。死ぬと本人すらわかっていながら抗わぬのは本能というか...
死から始まる。死ぬと本人すらわかっていながら抗わぬのは本能というか死を持ってしても譲れないという事か。人間が生きる為に作った全てに抗う。生き物はなんと難解。いやシンプルか。しかし彼女が落ちぶれていく様についつい心震える。ヴァルダはやはり天才だ。同様の映画は他にもあるが、やはり違う、少し。
冷たい社会と温かい他人
作品はモナの死後、彼女と関わった人々のインタビューを通して、彼女の人物像を明らかにしながら、その足跡を辿っていく。事件や自己を説明するのにテレビで用いられる再現VTRのような構成。
自分探しといった前向きな目的は感じられず、ただ何にも縛られない自由を求め彷徨い続ける一方で、寝食やヒッチハイクで他人の力を借りつつも、最終的にはいつも決まって追い出されるようにその場を去っていくことの繰り返し。これは、一体なんのメタなのか?
1980年代前半のフランスは、大統領就任直後のミッテラン・ショック(インフレ、景気の減速、失業者増加)の影響下。「冬の旅」の翌年には「ベティー・ブルー」が公開される。そんな時代背景を大きく反映しているようだった。
モロッコからの出稼ぎにフランスに渡った男性のマフラーへのキスが印象的、
全24件中、21~24件目を表示